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関係の行き詰まりを打開するための手法
面接における「枠」とは

臨床心理士 宮島謙介 

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関係の破綻や行き詰まりはカウンセラーを悩ませ続けている。枠のマネージメントは転移や逆転移を構造的に操作する器である。
※クライアントが親などに持っている感情を、カウンセラーに向けてしまうのが「転移」。カウンセラーがクライアントに感情を転移させてしまうのが「逆転移」

 今回、PCMにはマネジメントの心理的な側面について検討する為に参加させてもらったのだが、とくに面接における『枠』について参加者に話をするように求められた。PCMは電話相談のように一回で終結するタイプの面接とも違い、感染者/患者支援のように生涯的に生活をともにするかのようなかかわりあいとも違う。10回前後のセッションの期間にだけ二人はマネージャーとクライアントの関係になる。
 今回研修に参加されたみなさんは、それぞれ電話相談や感染者/患者支援という持ち場にある程度長く身を置いておられた方が多く、クライアントの心理状況について理解が深かった。と同時に、自分の持ち場に行き詰まりを感じながら今回の研修に臨まれていたともいえる。破壊的な展開に導かれる電話相談や、運命共同体のように接着してにっちもさっちも行かなくなる支援など、現場でならしてこられた研修生には、現場でならしたがゆえにわかる困難や失敗がある。
 私の専門は心理療法であるが、職業として成立している心理療法にしても、関係の破綻や行き詰まりなどについては、その歴史の中でやはり同じようにカウンセラーを悩ませ続けているトピックであり、それを解決しようと、さらなる発展がなされてきた。
 私的な意見になるのだが、カウンセリング関係・治療関係の破綻や行き詰まりを打開するための手法としては、「転移と逆転移」を読み解く方法と、「枠」をマネージメントする方法がよく取られていると思う。しかし「転移と逆転移」は理解も操作も難しく、枠のマネージメントだけを強調するのは教条的である。なぜ枠を大切にするのか、その背景には転移や逆転移が存在していて、枠のマネージメントはすなわち転移や逆転移を構造的に操作する器であると理解していただきたい。
 今回私が話したトピックは難しいかもしれない心配はあったものの、みなさんそれぞれの持ち場の経験の中から、新しい気付きを導きだしてこれからの活動の新しい発想として持ち帰られたと確信している。

[宮島謙介]

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