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講座5
グループワークの展開過程
講師:東京福祉大学 講師 山本 博之 氏 (2006.12)

 皆さん、こんにちは。東京福祉大学という大学からまいりました山本でございます。よろしくお願いします。
 今、私は大学で教員をしているんですけど、どんな経緯を辿ってきたかというと、一番最初にHIVとの関わりを持ったのが10年前ぐらいでしょうか。その当時、東京都の衛生局にですねエイズ対策室という部屋がありまして、そこにカウンセラー集団がいまして、その一員に入れていただくことになりました。ちょうど、都立駒込病院とかいろいろな病院がHIV患者感染者支援をして、非常に盛り上がっていた時期なんですけども、そこで5年程、カウンセラーをしました。同時に、私は生まれが静岡県なものですから、静岡の派遣カウンセラーも仰せつかって、二足のわらじで生計を立てておりました。そのあと、大学の非常勤なんかもやりながらやったんですけども、愛媛の大学で教員の口があるから山本受けてみないかと言われて行ったら、まんまと受かりましてですね、愛媛に4年程おりました。そこでも愛媛県の派遣カウンセラーをしてまして、たぶん日本広しといえどもですね、1都2県の派遣カウンセラーを経験したのは私だけではないかなというふうに思っております。で、そんなこんなで今は東京福祉大学という群馬県にある大学の教員をしておりまして、グループワークや援助技術といった講義を担当しています。
 この時間の中で、グループワークっていったい何ぞや、グループって何ぞやということを、専門的な話をちょっと噛み砕いて、お伝えできればなと思っています。

グループワークの定義

 グループワークというのは、ソーシャルワークのいわゆる支援の一つの方法として、確立していて、学生たちは社会福祉学部に入ると、グループワークという授業を取ったりします。では、いったいグループワークとは何ぞやという、まず定義のところから入っていこうかなと思います。
 コノプカという人がいまして、この方は亡くなったんですけども、次のような定義をしています。
「ソーシャルグループワークとはソーシャルワーク(社会福祉援助技術)の一領域であり、意図的なグループ経験を通じて、個人の社会的に機能する力を高め、また個人、集団、地域社会の諸問題に対して効果的に対処しうるよう人々を援助するものである」
 ここで一つキーワードとなる「意図的なグループ経験」っていったい何だということを、明確化したいというふうに思うんですけども。グループというのは、いくつかの種類があるんですが、皆さんがこの研修のあとに参加されるかもしれないセルフヘルプグループも含めて、ここで言うグループというのは自然発生的なグループではないんだよというところをまず一つ押えたいと思います。
 つまり、ここにグループがあるという何らかの情報を得て、何か問題を抱えていて、もしくは何か心にモヤモヤがあって、ここに来るともしかしたらいいかもしれないという、期待と希望とか、そういうものに溢れて、わざわざそこに行く。そうしたことによって形成されるグループ、これがいわゆるグループワークにおけるグループだと思うんですよね。

グループの種類

 グループワークのグループにはいろいろな種類が存在をしまして、代表的なもの6種類をご紹介したいと思います。

1.社会化グループ
 グループの種類にはまず、社会化グループというグループがあるそうです。あるそうですというのは私が編み出した理論ではなくてテキストから取ってきたものなので、あるそうですというふうに言うしかできないんですけども、社会化グループっていうのはどんなものかというと、人と人との交流がメインのグループなんですね。
 社会的に孤立されている方が、その孤立から抜け出して、そのグループに参加することによって人との交流が生まれて、そこでいろいろな社会性を獲得していくというような目的のもとに存在しているグループ、これを社会化グループと呼んでいるようです。

2.成長志向グループ
 二つめに成長志向グループというグループがあって、このグループのキーワードは「挑戦」。何に挑戦するかというと、新たな課題とか、新たな技術習得に向けて安全な環境のもとに挑戦していく。これが成長志向グループといわれているそうです。

3.教育的グループ
 教育的グループのキーワードは「学び」。たとえば、実はこういう薬を飲むようにってドクターから言われたんだけど、時々どうしても飲めないんだよねっていうような話を、とても看護師さんには言えないから誰か助けてよって、グループに持ってくると、「あ〜、これ私も飲んでいたことがあって、私はこういうふうにしてたよ」っていうような部分で、新たに情報を得て自分のライフスタイルに還元していく、このあたりが教育的グループの特徴であったりもします。

4.サポートグループ
 4番目がサポートグループといわれているもので、メンバー同士の話し合い、感情の分かち合い、情報提供、情報交換といったものがキーワードとして出てきます。

5.治療的グループ
 治療的グループというのは何かというと、心理的、情緒的課題の克服を主に目指した、専門家がかなりの率で介入するグループですね。もう少し精神科領域の治療的グループですと、性格や行動様式の変容というものを目指して行われているグループもあったりもするそうです。

6.セルフヘルプグループ
 そして最後がセルフヘルプグループといわれているグループで、いわゆる自助グループです。他の五つのグループと何が一番違うかというと、当事者、もしくはメンバーのみで行っていくことです。私たちのようなソーシャルワーカーはそこに介入して、ああだこうだグループを動かしていくことはしません。するとしたら、セルフヘルプグループをうまく動かしていくような会場の手配だったり、ちょっとしたジュースの差し入れだったり、ちょっと院内でですね、メンバーの募集を「こういうセルフヘルプグループがいついつあるから」と他の医者と連携して手伝ったり、そういう側面的なお手伝いはしますけれども、セルフヘルプグループには基本的に専門家は入っていきません。

グループには重なり合う部分もある
 今、6項目にわけて説明しましたけども、私は研究者としてこの六つが、それぞれ独立した形で存在しているグループというのはないと思うんですよ。たとえばサポートグループとセルフヘルプグループでどう違うのかといえば、たぶん構造だったり、メンバーの役割とかそういうものは重複する部分があるのかなと思っていて、これはあくまでも名目上の部分で、この六つのグループにはそれぞれ重なり合う部分、グレーゾーンが存在しています。

グループの持つ力

 次に、グループの持つ力について説明したいと思います。これは、人はなぜグループに来るのかな、何を求めてグループに参加するのかな、ということに繋がるものだと思うのですが。どうでしょう、皆さんも今までにいろいろなグループに参加された経験があると思うんですよね。趣味のグループしかり、スポーツのグループしかり、今日のような研修会のグループもそうかもしれませんし、地元で開催されている何かの協議会に参加するとかですね。そういう時に、人は何らかの期待や希望を持ってグループの参加するのかなというふうに思っています。
 ヤーロムという精神科医がグループの持つ力、もしくはグループの持つ効果、もしくは人がグループに参加する上で期待するものとして10種類をあげています。

1.普遍性
 一番最初にご紹介したい効果は普遍性です。人は何かしらの問題を抱えます。で、自分はその問題に対して葛藤を感じているんだけど、もしかしたらこんな問題を持っているのは自分だけかもしれないというふうに思ってしまうことってあると思うんです。
 たとえば、HIV感染が分かって、もう自暴自棄になってやたらめったらうつしまくってやるっていうふうに思ってしまう感情が生じたとするじゃないですか。でも心の中には、そんなことはしちゃいけないっていう思いもあって、それが心理的な作用で、葛藤として出てくるわけですよね。そうなってくると、俺って馬鹿、こんなこと考えるなんて自分だけかもしれないというふうに思ってしまったりする。でも、サポートグループやセルフヘルプグループに行くと、割とみんなが似たようなことを考えていたりして、あ〜、自分一人だけじゃないんだという感情の変化が起こる。いわゆる孤立感、心理的な孤立、その部分から解放される力がグループには存在するのかなと思います。
 私はHIV関連だけじゃなくてですね、小児がんの家族に対する心理社会的支援を行っていまして、あるお母さんがこういうことを言っているんですよ。そのお母さんにはお姉ちゃんと妹さんがいて、お姉ちゃんが白血病で亡くなったんですね。亡くなってから、妹の方が可愛くなくてしょうがない、憎たらしい、どうしても愛せない。でも母親としては愛さなくちゃいけないっていう葛藤を抱えて、もうこんなひどい親は私だけかもしれないというふうに思っていたら、実はグループに行ったらみんながみんなそういうふうに感じていて、あ〜、良かった、自分だけじゃなかったんだというような心の解放、こういう部分がグループには存在すると言われています。

2.希望の発見および維持
 二つめは希望の発見および維持。セルフへルプグループのメンバーは当事者同士の仲間なんですけども、たとえば皆さんがセルフヘルプグループをやっていく場合は、どちらかというとリーダー的な存在になりますよね。そうすると、新しく参加したメンバーは皆さんを通じて、将来の自分を見つけたりします。
 今、なんかいろいろな問題があって気持ち的に落ち込んでいるけども、こういうふうになれるかもしれないという希望を発見したりします。皆さん、決してプレッシャーかけているわけじゃないですよ。グループをリードする中で、新たなメンバーの希望の星になれるわけです。それを通じてグループに参加しようというメンバーの動機付けにも繋がっていくとも言われています。

3.愛他主義
 愛他主義というのは何かというと、他のメンバーとの関係性において、他のメンバーをサポートするという機会を得るということ。これによって自己効力感、セルフエスティームが向上するのではないかということも言われています。

4.対人関係の学習
5.行動の模範
6.社会スキルの発達

 対人関係の学習や行動模範もそうですね。この時どうしたらいいの、こういうふうな活動をした時にみんなどういうふうに対処しているっていう情報提供のもとに、あ〜こうすればいいかもしれない、うまくいくかもしれない、というように、他の人の行っている行動を自分に取り入れるというような、行動の模範とか社会スキル、対人関係の学習という効果もグループには存在します。

7.カタルシス
 7番目は安全な環境で感情を発散できる、という意味でのカタルシスです。たとえばメンバーが受容的で、ここに来たら素直な自分になれる。泣きわめいてもうるさいとも言われない、そこにただみんな一緒にいてくれる。だから私はここで安心して泣けるし騒げるしいろいろな言いたいことを言える、すっきりしてグループのあとに家に帰れるというような、感情の発散という意味でのカタルシスという効果があります。

8.グループの凝集性
 グループの凝集性というのは、メンバー同士で魅力を感じ合ってグループが一つにまとまるという意味での凝集性です。

9.実存性
 9番目の実存性は、8番の凝集性とは全く違った部分でして、だけども自分は一人だよね、家帰ったら一人だし、社会生活も一人だし、自分のやっていることは自分で責任を取らないといけないよね、というような感情の変化。そういうものに繋がっていく効果として実存性ということが挙げられています。

10.家族関係の修正的再体験
 家族関係を取り扱っているようなグループですと、家族関係の修正的再体験っていったものが挙げられるんですけども、これは何かというと、いろいろなことを期待して、メンバーはグループに参加しますよということの裏返しではないかなというふうに思ったりもします。

グループの力動

 こうしたグループが持つ効果であったり力というのは、どうやって生まれてくるかというと、グループメンバー同士の相互作用によってもたらされるんですね。それをグループの力動、グループダイナミクスと言ったりします。グループの力動によって各参加者の心理的な変化が生まれたり、もしくは社会的な変化に繋がっていくのかなと思っています。
 グループというのは生き物なんですね。生き物ですからいろいろな動きがあって、その中で個人個人の成長がグループの成長にも繋がっていったりもするわけです。たとえば、ピアサポーターとメンバーとの関係性、この中でもグループの力動が起こります。これは直接的なやりとりです。ピアサポーターは時としてメンバーとメンバーとの間に介入をしたりもします。メンバー同士が関係性を形成することによってグループが力動性を増したりすることもあります。そして、いろいろなメンバーがいる中で、メンバー同士の関係性も複雑化します。これが繋がっていくとグループ全体の動きになってくるんですけども、ピアサポーターがグループ全体に関わりを持つことによってもグループの力動があるというような部分で、いろいろな経路を通じて私たちは相互に影響し合っている。グループの動きと共にいろいろな方たちの関わりというものが生じて、それがグループの変化、個人の変化というものに繋がっていくのかなというふうに思ったりもしています。

グループの構造

 グループにはいくつかの種類があるという話をしましたが、それとは違う意味で、グループの構造というものがあります。
 セルフヘルプグループというのは多くの場合、人数に制限がありまして、スモールグループと分類されるグループでは、おおよそ10名前後というのが一つの基準になっています。
 形態ですけども、メンバーは自由に入れますか、それとも一回の募集で集まったメンバーでたとえば半年間ずっといくんですか、というような判断もグループを形成する上では行わなければなりません。グループにはオープングループとクローズドグループの2種類があって、たとえば月に1回、半年間会いましょうというときに、最初のグループが始まってからずーっと6回とも同じメンバーで行く。メンバーの一人が何らかの都合で来なくなってもメンバーの補充はせずに6回とりあえず終わらせるグループがあります。これはクローズドグループですね。このグループのいいところというのは、メンバーが限られていますのでゴール設定、ゴールに向けての達成の動機付けというのが高まる、深まるんですね。話し合われる内容も前回から今回、今回から次という形で深まりを見せることができます。ただし、グローズドグループは新しい風は吹きません。あたらしいメンバーは入ってこないけども、その分深まりができます。オープングループは逆に深まり合うことは難しいかもしれませんけれども、自由にいろいろな人たちが入ったり出たりしますから、いろいろなメンバーが来て新しいアイデアとか新しい流れが生まれてきやすい。それぞれメリット、デメリットがあります。
 そして、グループを開催する頻度や期間というのはどうしましょうかねということ。毎週やるのか、月に何回かなのか。半年続けるのか、ずっと続けるのか。
 こういった人数、形態、頻度、期間といったものからグループの構造が定義づけられております。皆さんが始められる時には、グループはどんな形で運営していこうかな、どんな目標を持とうかなということで変えていく自由性というのは私はあってもいいのではないかなと思っております。

グループワークの展開過程

 先ほど申し上げましたように、グループというのは生きています。それぞれグループの展開とともに個人の成長もあれば個人の後退ももちろんあります。それらがグループの展開にも影響を及ぼしているんですけども、グループの展開過程には大きく分けて4段階あるのではないかなというふうに言われています。準備期、開始期、作業期、終結期の四つです。

グループの準備期
 グループの準備期では、先ほど申し上げましたグループどうしようか、オープンにしようかクローズドにしようか、いつやろうか、何時間やろうか、人数は何人ぐらいにしようか、といういろいろな準備を行います。もう一つ忘れてはいけないのは、どんな目標でやったらいいかという動機付けなんかもこの準備期に行っていきます。
 セルフヘルプグループであれば、それを企画する人たちが他のメンバーに対して、グループを通じてどんなサービスを提供しようか、どんな効果を期待していこうかというよなグループの目標というものがあってもいいんじゃないかなと思います。
 ここはまだメンバーが来る前の段階ですから、会場の設定もあればリクルートもある。どういう形で人を募集しようか、10名と言ったけど15名ぐらいいけるかもしれないというようないろいろなディスカッションがあってもいいと思うんですね。それからいよいよメンバーの募集をかけて、参加者が集まりましたというところで、実際にグループが動いていく段階に入ってきます。

グループの開始期
 このあたりから、過去にグループに参加した皆さんの経験と合わせてお話をしていきたいんですけども。どうでしょう、新しいメンバーにとって、そこは全く知らない未知の世界なんです。扉を開いたら誰がいるかもしれない、そんなグループに参加された経験がたぶん何人かはあるかと思うんですけども、期待と不安というこの2種類の気持ちがあったんじゃないかなと思うんですね。ここに行けば何か面白いことがあるかもれしないけども、もしかしたら仲間はずれにされたらどうしようとかですね。
 私、趣味のグループなんでけども、非常にトラウマがありまして。何かというと、バドミントンをやったんです。私は留学をしていまして、むこうの大学は夜中の12時までハードコートで無料でテニスができるので、テニスは自信があったんですね。これだったらバドミントンも楽勝だろうと思ってやったら、けんもほろろなんですね。初めて行ったバドミントンサークルでも相手にされない。そういうトラウマを抱えてしまったので、違うバドミントンサークルに行っても、またああいう経験をしたらどうしようかと躊躇してしまう。でもやりたいしな、強くなりたいしなという二つの相反する感情が私の中で存在しています。
 メンバーはいろいろな不安を抱えてサークルとかグループに参加します。その中で皆さんの役割は何かというと、いかにメンバー同士が打ち解けられるか、この研修にもアイスブレイキングというワークがありましたね。アイスブレイキングというのは、氷を壊す、いわゆる皆さんの不安とか緊張で固まった気持ちを融和させる、解きほぐすというような効果があるんですけども、そういうようなアイスブレイカーの役割をこの準備期から開始期においては、皆さんは行っていくことが期待されます。
 アイスブレイキングの一つの原則として、もしくはグループワーカーが持つべき一つの原理原則として、メンバー同士がうまくコミュニケーションできるような、側面的な支援というものが必要になってくるのかなというふうに思っています。それにはたとえばグループワーカー自体も、もしくはピアサポーター自体も新しいメンバー、今日集まっていただいたグループのメンバーに受容的であったり、個別的であったり、共感的な反応というものを皆さんが率先してすることによって、あ〜、今日来て良かったなというふうな、第1回目のミーティングの時に、あ〜今日来てよかったな、次回また来ようかと思わせたら皆さんの勝ちですから。まあ勝ち負けの世界じゃないんですけども、皆さんがそこにいた効果があったということじゃないかなというふうに思っております。
 グループの開始期では、メンバー同士の関係作りというのがキーワードになります。

グループの作業期
 グループの作業期では、どういう状況になるかということなんですけども、ここでも皆さんの経験を振り返っていただきたいと思います。
 中学校とか高校の時に全く学区が違った環境に行かれた方がいらっしゃると思うんですよ。たとえば1年A組に入った。で、最初のころの仲間同士の関係性ってやたら表面的ではありませんでした? 表面的にとにかく仲が良い。なんでこういうことが起こるかというと、表面的に仲良くて、腹の底では何をしているかというと、力関係の駆け引きが起こっているんですよ。あ〜こいつは舎弟にできそうかな、こいつには逆らわない方がいいななんていうような駆け引きが起こっている。一時的に表面的に仲良くする中で、心理作戦が起こっているんですね。これがいわゆる開始期からしばらく経ったあとのグループの特徴なんです。
 時間が経てば経つ程、いろいろなところで葛藤ができたり、いろいろなサブグループができたりして、分裂したり融合したりというのが、ジェンダー的な発言をして誠に恐縮ですけども、女どもの世界はそんな感じ、おねえの世界も、ヘテロ男もそんな感じかもしれませんけども、そういうふうに分離したり癒合したり分離したり融合したりします。あるグループはそこで無くなってしまうかもしれません。あるグループはそれを繰り返すことによって次の段階にいけるかもしれない。うまく分離融合の舵取りを行っていくというのがグループワーカーの一つの役割。これがグループの作業期における、グループワーカーもしくはピアサポーターの役割であったりもします。

グループの終結期
 そして最後は終結期を迎える。ずーっと続いているオープングループであれば、多くの場合、いろいろな人が来て、いろいろな人が去っていって、いろいろな人が来てという形で続くんでしょうけれども、期間を区切って、6回なら6回、12回なら12回というふうにグループを運営する場合は必ず終わりが来ます。
 終わりが来るというのは、グループメンバーの一部の人にマイナスな感情をもたらす場合があるんですね。グループでの関係、もしくは経験が心地良ければ良いほど、グループから離れたくないっていうふうに、このまま終わっちゃったら嫌だよというような抵抗が起こるんです。抵抗が起こるというのを皆さんはどうやって感じるかというと、今まで○○さんこうだったのに、グループの終結が近づいてきた時に、急にこうなっちゃったっていうような大きな変化がある。もしくは元に戻ってしまうことがあります。これは終結に向けてのグループメンバーの抵抗だというふうに捉えて、そこで個別的に関わりを持ったり、グループの力を利用するなりして、その方たちが健康的にグループを終結できる、エンディングを迎える、エンディングを迎えさせるというような役割、これがグループワーカーには必要になります。
 じゃあ、どうやって具体的にエンディングを迎えさせればいいのか。これはグループによって千差万別なんですけど、一つだけ変わらない基準があって、今日のグループでいきなり終結をしない、ということです。終結は準備されるものであります。じゃあ、そろそろ、あと2回、3回になってきたので、今までの振り返りをしようかといったように、少しずつ終結に向けて、グループが解散する事実に向けて、心理的に準備ができるように持っていく役割、これをグループワーカーは担っていきます。

グループの制限(約束)

 ここまで、大まかにグループワークの概論的なお話をさせていただいたんですけども、もう一つ重要なポイント、グループの制限、約束についてお話しさせていただきたいと思います。
 この研修会にも約束事がありますよね。たとえば、この中で話し合われたことは必ずこの中のものだけとして外には持ち出さない、という約束があったりしますよね。今回の日本エイズ学会は写真撮影は駄目でしたね。スライドの撮影も駄目だったのかな。といったようにグループにも約束事があります。これはプライバシーのことだけじゃありません。あくまでもメンバー同士の関係性でグループは動いていきますから、たとえばメンバーが一回発言したら、その発言が終わるまでほかのメンバーは口を出さないという約束事を設けるというのも一つですよね。ほかのメンバーの発言を否定しないというような約束事を設けているグループもあります。こうした制限は、ある程度の骨子をグループを企画する側が作っていたりもしますけども、準備期から開始期にかけて、グループメンバーが集まった時にみんなで決めてもいいんだと私は思うんです。このグループの約束事はどうしましょうかね、っていうテーマからグループを開始させてもいいのかなと思ったりもします。
 制限っていうのは非常にネガティブな表現なんですけども、毎回、安定的に開催できるようにグループを維持しつつ、グループの課題を達成するという究極的な命題がグループリーダー、もしくはピアサポーターにはありますので、グループのルール、約束事を設定することも必要になってくるのかなと思います。
 これまでの話を参考にしていただいて、機会があれば、皆さんがこれから、こういったグループとしての関わりを持っていって欲しいなと思います。