2000.9
21世紀のエイズ研究に向けて
-専門分野を超えた「対話」の場へ-


第14回日本エイズ学会学術集会・総会
会 長  速 水  正 憲
京都大学ウイルス研究所エイズ研究施設感染病態研究領域 教授)

 第14回日本エイズ学会学術集会を2000年(平成12年)11月28〜30日、京都テルサにおいて開催いたします。
 人類史に残る今世紀最後の大きな出来事であるエイズの出現から、そろそろ20年経ちます。21世紀を前にして今迄の私達とエイズとの関わりを整理して、21世紀におけるエイズ研究の展望を計れればと思います。
 アフリカの奥地で平和に暮らしていたHIVも人間界に引きずり出された今、必死に生き残ろうとしています。その戦略は変わり身の早さによる「多様性」の拡大にあります。それが、「薬剤耐性」ウイルスの出現やワクチン開発の困難さに表われております。(本学術集会では「薬剤耐性」と「ワクチン開発」を医学関係の大きなテーマとして取り上げました。)しかしHIVの本懐は決して人類を滅亡させることではなく、むしろ人類との共存を望んでいます。現在はHIVがアフリカ奥地での狭い生態系から、人類を含む地球規模の生態系に組み入れられつつある過程ととらえることができます。このようなHIVとどうつきあっていくかを考える機会にできたらと思います。
 エイズの本態を知るには、自分の専門分野からのみの視点ではなく、様々な角度からのエイズとの関わりを知る必要があると思います。このことにより自分自身の取り組む姿勢が見えてくるのではないでしょうか。
 このようなことから、各専門分野における問題を掘り下げることも大切ですが、それと同様に「異なる専門分野間の交流の促進」を積極的に計る工夫をしてみました。

1、ポスター発表の併用
 一般演題(と一部のワークショップ)では口演のみではなくポスター発表も併せてお願いします。
 口演を聴くのは、自分の専門分野に限られがちですが、空いた時間に他分野のポスター会場に足を運んで下さい。当然、同じ分野でも聴きのがした演題や細かいデータの確認、さらなる十分な議論の為にポスターを利用して下さい。ポスター会場に異なる分野の方々の談論の輪がいくつかできることを希望しています。

2、一般口演の簡潔化
 ポスターを併用することから、一般口演は従来の7分に代わって5分としました。細かいデータの説明を省き、目的・(材料・方法)・結果・(考察)・結論に準じて、伝えたいメッセージを伝えるのに十分な時間と思います。短時間で多くの発表をきけますので、その分野の研究状況と問題点をつかみ易いと思います。細かい議論はポスター会場でお願いします。
 短時間の口演を効率よく行う為に、全ての一般口演と大部分のワークショップを【OHP】の使用にしました。御批判もあると思いますが、他学会で成功している例もありますので、御協力下さい。

3、重点課題からなるワークショップ
 一般の方からを始め多くの理事・プログラム委員から提案のありました重要テーマを運営委員会で整理して、14のワークショップを設けました。これらのワークショップにより、各専門分野内や分野間における最近の重要課題と問題点を容易に理解していただけると思います。

4、交流会(Get Together)
 2日目(29日)17:30から19:30まで、レストラン「朱雀」(東館一階)で交流会(無料)を行いますので、参加してください。本学会の特色は多種多様な立場の人々から構成されている点にあります。お互いに知り合い、交歓する場となることを希望します。多くの方々に参加していただけるように、会費無料としました。こちらで用意しました軽食と飲み物が早くなくなり過ぎると悲鳴をあげるほどに多くの方々の参加をお願いいたします。2日目、全プログラムの終了後、夜の京都の街に出る前にのぞいてみて下さい。もし、会場が狭くてはみ出した方は、ポスター会場にも軽い飲み物を用意しておきます。

 以上のように、今回、これ迄にない試みをさせていただきますので御協力下さい。
 その他にも例年どおりの招待講演、特別講演、シンポジウム等をいくつか企画しており、既に多くの方々が運営委員やオーガナイザーとして、またその下準備に意欲的に取り組んでいただいております。これらの方々に感謝するとともに、学会は会長や事務局のみではなく、参加される一人一人の方々によって作られるのだということを実感しています。
 当日、お目にかかれるのをお互いに楽しみにしましょう。

 


2000.6

専門分野を超えた「対話」の場へ


第14回日本エイズ学会学術集会・総会
会 長  速 水  正 憲
京都大学ウイルス研究所エイズ研究施設感染病態研究領域 教授)

 学会準備を始めて今更ながら、エイズ学会の「多様性」に戸惑っております。これだけ「基礎」から「臨床」そして「社会」と直結している学会はないのではないかと思います。この学術集会が、それら専門分野を越える「対話」の場となることを希望しています。

 その為に以下の3つの工夫をしてみました。一つは、一般演題と並んでワークショップを重視しました。二つ目は全ての一般演題の発表を口頭とポスターの両方でお願いすることとしました。三つ目は交流会(Get-together)を設けました。

 口頭発表のみでは、どうしても聴くのは自分の専門分野のみに限られてしまい、しかも、会場数が多くなった今、聞き損なうものも出てきますので、5分間の口頭発表で要約していただき、その後ポスターでじっくりとディスカッションをしていただきたいと思います。このことはまた、学会としての学問的水準を保つ上にも効果があるものと考えます。発表者にとっては二重の手間となりますが、ご理解いただき、この初めての試みにご協力いただければ幸いです。

 また、今回は、事前登録を採用し、若い方々が参加し易いように学生割引も導入いたしました。多くの皆様のご参加をお待ちいたしております。

 


2000.3

第14回日本エイズ学会学術集会・総会
開催のお知らせ


第14回日本エイズ学会学術集会・総会
会 長  速 水  正 憲
京都大学ウイルス研究所エイズ研究施設感染病態研究領域 教授)

 HIVが発見されてから既に15年以上経ちましたが、現在、世界の感染者は3千万人を突破し、依然として拡大しつつあり、我が国もその例外ではありません。
 近年、臨床面での多剤併用療法の適用、基礎面でのコレセプターの発見など大きな成果が得られましたが、さらなる努力が求められています。原点に立ち返り、治療薬・ワクチン開発のベースとなる「なぜHIVはエイズを起こすのか?」の根本命題に取り組み、次の展開を計る必要を感じています。
 エイズ問題が単に基礎・臨床医学研究者のみでは解決できないことは当然であり、現場の医療・教育・啓発に携わっている方々も含め多くの方々の結集が必要です。多種多様な各分野における問題を深化させるとともに、相互理解と連携を深め、私たちの目標「エイズを通しての人間理解」を認識・共有し、総合科学としての「エイズ学」を打ち立てるきっかけとなることを、今年の学術集会に望んでいます。
 なお、基礎・臨床・社会の三分野を昨年同様網羅し、更に充実を計る為、私の専門外の社会分野を白阪琢磨先生(国立大阪病院臨床研究部門)、臨床分野を上田良弘先生(関西医科大学洛西ニュータウン病院内科部長)に各々の分野のプログラム総括委員長を委嘱いたしましたので、ご協力をお願いいたします。
 今年の第14回日本エイズ学会学術集会・総会を下記の要領で開催いたします。各分野からの多くのご協力とご参加をお願いいたします。

会期:2000年11月28日(火)〜30日(木)(3日間)
会場:京都テルサ
   〒601-8047
   京都市南区東九条下殿田町70(新町九条下がる)
   京都府民総合交流プラザ内
    【JR京都駅より徒歩約12分】
   TEL: 075-692-3400 FAX:075-692-3402
事務局:京都大学ウイルス研究所 エイズ研究施設
    感染病態研究領域
      〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町53
      TEL: 075-751-4802 FAX:075-761-9335
演題締切:2000年7月17日(月)【必着】
演題募集要項登録要項は2000年5月発行予定の学会誌にて掲載予定