LAP NEWSLETTER

7年目を迎えた市民による市民のためのフォーラム
2000AIDS文化フォーラムin横浜参加報告


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ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)NEWSLETTER 2 2000年8月4日(金)〜8月5日(日)まで、かながわ県民センター(神奈川県横浜市)にて2000AIDS文化フォーラムin横浜が開催されました。
 94年に横浜で開催された国際エイズ会議をきっかけに始まったこのフォーラムは今年で7回目。会場運営は約100名の手弁当のボランティアによって支えられ、講演やワークショップ等のプログラム数は64にのぼり、3801名の参加があったそうです。これほど多彩なグループ・個人が発表や展示を行なうイベントは日本で他に例のないものでしょう。その全てを紹介することはできませんが、当日の雰囲気を感じていただければ幸いです。

・2000AIDS文化フォーラムin横浜プログラム
・2000AIDS文化フォーラムin横浜・新聞報道記事(神奈川新聞2000年8月5日)

  8月4日(金)10時〜12時
  岡田美里と語るエイズ
  現在、女性誌の表紙を最も多く飾っている女性のひとりである岡田美里さん。彼女は92年に夫とともに「堺正章エイズ基金」を設立し、代表を務めています。日本の芸能界においてPHA(People with HIV&AIDS)と直接に交流をもち、支えている活動をトーク形式で紹介します。(プログラム紹介文より。以下同)

 開会式の前にホールで行われたこの講座には多くの人が集まった。「堺正章エイズ基金」はチャリティゴルフコンぺがきっかけとなり設立され、公的機関より支援を受けていないエイズおよびHIV支援団体への援助を主に行っている。設立当時、マスコミに大きく取り上げられたのだが、その際に間違った情報が掲載されてしまったというエピソード、性的接触による感染者として日本ではじめてカミングアウトした故平田豊さんとの出会いの思い出などを岡田美里さんが話されたほか、同基金が現在サポートしているグループのHIV感染者の方とのトークもあった。講座の間中、会場には笑いが絶えず、優しい雰囲気につつまれた2時間だった。
 なお同基金では「あるある大辞典」で堺正章氏が胸につけているレッドリボンバッヂも1個7百円で扱っているそうだ。(けんた)

  8月4日(金)13時〜15時
  エイズ患者診ます(HIVとつきあう開業医の会 西村有史)
  開業医としてHIV診療に取り組む西村医師に、エイズの基礎知識から現在の診療状況までをわかりやすく講義していただく。昨年実施した講座は「とてもわかりやすかった」と大好評でした。

 私がこのタイトルと同名の西村先生の本を読んだのは、確か二年程前のことです。HIV感染者の治療は一部の大病院でしか行われていないというイメージが強かった私にとって、開業医としてHIV診療に取り組む西村先生の本は大変興味深い内容でした。
 プログラムでの「エイズ患者診ます」では、AIDSに関する基礎知識や開業医としてのHIV診療の取り組み等について、一般の人にも分かる言葉でとても丁寧に説明して下さいました。
 実は「診療所でHIVの治療が本当にできるのか?」と疑問に思っていましたが、専門の病院と連携していることや、大病院ではともすればおろそかになりがちな感染者の人間関係や生活環境を把握しながら治療に携わっていることを聞き、逆にこれからはむしろこういった診療所での治療が大切になってくるのではないかと強く感じました。
 特に地方に住んでいる感染者にとって、近くに専門の病院がないことは切実な問題だと思います。―全てを専門の病院に任せるのではなく、専門の病院との連携を図りながら感染者と共に治療に取り組んでいく―このような診療所が全国的にもっと増えれば、感染者の心理的な負担も軽減されるのではないでしょうか。(坂東)

  8月5日(金)16時〜18時
  H.I.Voice座談会 それぞれのHIV〜多様な今とこれからの課題(H.I.Voice編集局)
  今年は「H.I.Voice」の公開講座を開きます。患者、医療従事者、教師、学生、親、ボランティアとして、それぞれの立場で、それぞれのHIVについて語り合います(途中入場・録音・撮影はできません)。

 このセッションでは、H.I.Voiceからのスピーカーによる体験談と、それをふまえた上での会場の人たちとの意見交換が行われた。話された内容については参加者の守秘義務があるため、ここでは述べられませんが、活発な意見交換があり、会場で話せなかった人には別紙が渡され、そこで意見を述べるという形になっていた。
 今、PWH/Aの方やそのまわりで、具体的にどのようなことが起こっていて、どのようなことに困難を感じるのか? 実際の体験から出る言葉は、とても説得力があった。
 いろんな立場の人のいろんな意見が聞けてとても感銘を受けた。H.I.Voiceの行っている試みは、通信誌を通した言葉のやり取りが主である。この地に足の着いた地道な試みこそが、エイズを考える上での最も基礎となるところではないだろうか?
 様々な立場の人たちの意見の食い違いや誤解を取り払う手段は、地味ではあるが、それでもやはりこのような「対話」なのではないかと思う。だから僕はこれからも、H.I.Voiceの活動を通して、エイズやその他のいろんな問題を彼らとともに真剣に考えていきたいと思った。(新ヶ江 明遠)

  8月5日(土)10時〜12時
  これでいいのか保健所 活用方法を大激論!!(Peer Network Yamagata[ぴにぃ])
  果たして、保健所は活用されているのか? 活用方法を提示し、会場から幅広い意見・要望をいただく。そしてPWA・NGO・行政等が連携・相互活用し、より意義のある活動を展開していくことを目的に検討していく。

 このプログラムは保健所でHIV抗体検査を受ける人が減っているという現状に対し、これからの保健所のPR方法や活用方法を議論していこうというもので、保健所関係の方が多く参加されていたようでした。
 講演者である山形県村山保健所の保健婦、渡會會睦子さんはAIDSと保健所・保健婦に関するアンケートをとったり、啓発活動をしていくなど、地方でも積極的な活動をしており、私自身、地方に住む一人としてとても刺激を受けました。
 渡會さんの行ったアンケートの結果によると、保健所でHIV抗体検査を受けられると知っている人が15〜19歳で38%に過ぎず、20〜24歳の62%、25歳〜29歳の78%と比べその低さが際だっていました。保健所でHIV抗体検査を受けられると知っている人の中で、保健所でのHIV抗体検査が無料だと答えた人は61%、住所・氏名などを言わなくていいと答えた人が65%。2つとも正解だった人(無料・匿名と回答した人)は保健所でHIV抗体検査を受けられると知っている人の中の49%に過ぎませんでした。※ニュースレターの中で太字の部分を「回答者全体(575名)の61%、65%、49%」等と表記してしまいましたが、正確には「保健所でHIV抗体検査を受けられると知っている人(340名)の中の61%、65%、49%」等でした。お詫びして訂正します。
 保健所の悪いイメージの例として「室内が暗く、保健婦さんも暗い感じ。料金が高くても健康診断は病院へ行くようにしている」という話もありました。
 私はこのプログラムに参加するまで保健所が何をするところなのかほとんど知らず、まだ具体的な保健所のPR方法や活用方法を述べる段階に至っていません。ただこれからは一部の保健所のみならず、全国の保健所が総力を挙げて啓発活動をし、日本全体のAIDSに対する意識を少しでも高めていくよう努力すべきであるのではないかと思いました。
 また渡會さんとともにお話をされたHIV感染者の大谷さんが述べられた「誰か他の人がやるのを待っていてはいけない。受け身にならず、積極的に」という言葉が胸に残りました。(坂東)

  8月5日(土)10時〜12時
  タイにおけるエイズ孤児ケアセンターの設立(バンコクにエイズ孤児ケアセンターを作る会)
 

AIDSは、もう世界的課題である。日本の中だけで考えるのではなく、アジアですでに直面しているAIDSへの課題を、自分たちのものとして分かち合えないかを学び、考える。バンコクにエイズ孤児ケアセンターを作ることを通して、日本で見えないものが見えてくる。一緒に、ともに生きることを分かち合うために。

 エイズは今、世界中でどのような問題を引き起こしているのか? WHOの報告を通して、20世紀末のエイズの世界的状況が説明された後、アジアの問題、タイの問題へと話が進み、この団体がどのような経緯を経て、この会を設立するに至ったのかの説明があり、その後このセッションに参加した人々による意見交換があった。日本では見えてこない様々なエイズの問題が、スピーカーの話を通して見えてきた。
 このセッションに参加した人々は、今までは身近に感じなかったエイズの問題を、まさに他者の問題としてではなく「自己」の問題として考え始めたようだった。
 話は日本のエイズの状況に移り、日本のエイズの問題は社会的に隠蔽されているのではないか、という話になった。日本のエイズに対する危機意識の欠如は、今後日本国内でも深刻な問題を引き起こすのではないかとという意見も出た。
 しかし最も重要なことは、私たちがあまりにも世界のエイズの状況を知らないということだった。
 私たちの無関心が、さらに世界のエイズを深刻な問題としていく。今、他者の問題ではなく「自己」の問題としてエイズを考えることが、世界の状況を変えていくきっかけになるのではないだろうか。少なくとも、このセッションに参加した人々は、エイズの問題を「自己」の問題として真剣に考え始めたと思う。(新ヶ江 明遠)

  8月5日(土)13時〜15時
  神様がくれたHIV(北山翔子)
  「神様がくれたHIV」の著者、北山翔子さんのトーク。 金曜日に行われた岡田美里さんの講座と同じく、ホールは満員。会場係の人が急きょ、イスを追加するほどの盛況ぶりを見せたこの講座、メインの話し手は「神様がくれたHIV」(紀伊国屋書店刊)を5月に出版した北山翔子氏。同著は「恋愛でHIVに感染した女性が初めて語る、感動の手記」として話題を呼んだので、すでに読まれた方も多いかもしれない。

 司会の岩室紳也氏との掛け合いの中、北山氏は話を進めた。「現役の保健婦」「プロの医療関係者」である自分がどうして感染したのか。タンザニアで健康診断を受け、結果を待っていたが自分にだけ届かない。その時は「ひょっとしたら。でもまさか自分が…」という思いだったという。HIV陽性という結果を知ったときは血の気がさっと引いていく感じで放心状態だったそうだ。
 「いつかは家庭を持ちたいと思っています」という彼女は帰国後、新しいパートナーを見つけたが、相手に「僕は子どもがほしいし、親にも孫の顔を見せてあげたいから」と言われふられてしまった。HIV感染者だから子どもは産めない、子どもは持てないという誤解はまだまだ根強いのか。子どもが持てないなら別れて別な人を探すという行為はHIVだけに限らない、もっと大きな問題を含んでいる。北山氏の力強く、ユーモアに富んだ2時間にわたるトークは私たちに自分らしい生き方を問うているように感じた。(三木淳一)
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  8月5日(土)13時〜15時
  愛情は大切な薬です〜ルーマニア エイズと闘う子どもたち〜 (ルーマニア・エイズチャイルド基金)
  国を問わず、世界的な問題となっているエイズ。しかし、感染者の90%が幼い子どもたちという国は、世界中に一国しかありません。ヨーロッパの東に位置するルーマニアでは、革命から10年以上たった今でも約5千4百人の子どもたちがエイズに苦しんでいます。ルーマニア以外にロシア、南アフリカ、アメリカのHIV/AIDSの状況も伝えます。

 今ルーマニアでは約5千4百人の子供たちがエイズと闘っている。HIV感染者のなんと90%が子供たちなのである。なぜこのようなことが起こったのかが、チャウセスク独裁体制下にあった10年前の政治体制との関連から見えてくる。貧困の極みであった革命以前のルーマニアにおいて、栄養失調の子供たちに海外から渡ってきた大人の血液が輸血されたのである。このようにしてエイズは子供たちの間に爆発的に広がった。
 ビデオとスライドを通して、ルーマニアのエイズと闘う子供たちが映し出された。スピーカー(講演者)の浅井淳子さんの実際に体験した話が、このビデオとスライドに付け加えられる。なおこのルーマニアの子供たちの写真展も一階の展示場で期間中に行われた。
 エイズがまさに政治的問題なのだということを、この例ほど如実に語っているものはない。世界のエイズに苦しむ人々の多くがこのような子供や女性などの社会的弱者であるということは、何か戦時中の無差別殺人を思い出させる。庭や施設で元気よく遊んでいる子供たち。無邪気に遊んでいる子供たちは、自分がいずれこの病気で死んでいくのだということを、子供ながらに知っているのだ。その姿が見るものの心を打った。
 今ではエイズの薬が出てきているのに、この国の子供たちはそれが飲めない。貧しさゆえに。日本の多くの人たちが、このような状況を知らない。僕は自分の無力さが、とてもくやしかった。(新ヶ江 明遠)

  8月5日(土)13時〜15時
  ゲイの医療者からみた、ゲイの健康問題AGP 同性愛者医療・福祉・教育・カウンセリング専門家会議
  AGPは、医療・福祉・教育・心理学の分野に従事するゲイや、そうした分野に興味を持つゲイの集まりです。今回のフォーラムでは、ゲイの医療者から見た、ゲイを取り巻く健康問題の現状及びその対策についてご紹介します。

 AGPはゲイ向けSTD(性感染症)勉強会を毎月、新宿2丁目で行うなど、ゲイコミュニティに積極的な働きかけをしていることで知られている。同会が行っている無料電話相談にはHIVはもちろん、肝炎や梅毒など様々な感染症の相談が寄せられているという。講座の中ではSTDの感染経路に関する診断・治療に必要な情報の開示が遅れ、適切な医療が受けられていない可能性や、医療者全般にセクシュアリティに関する認識が低く、同性愛者の健康を促進する意識が低いといった問題が指摘された。(HS)

  8月5日(土)16時〜18時
  エイズ教育における感染者の役割・大石敏寛(せかんどかみんぐあうと)
  学校におけるエイズ教育の中で、感染者が果たす役割について、教育現場の皆さんとともに考える企画です。感染者の立場から学校でのエイズ講演活動や調査研究に関わってきた大石敏寛がその報告も行う予定です。

 このプログラムでは感染者である大石敏寛さんがこれまでに行ってきたエイズ教育の具体的な内容とその評価が発表されました。また、教育活動の一つとして現在同会が取り組んでいる新しい参加型エイズ教育のモデルを実演するため、プログラムの参加者のうちの4人がロールプレイを演じることになりました。
 私はこのロールプレイに実際に参加しました。ロールプレイとは、その役になりきることで、その立場におかれている人の状況や感情を想像し、理解を深める方法で、私は『一年前にHIVに感染し、恋愛感情を持った人に自分の気持ちと自分がHIVに感染していることを伝える』という役でした。
 数分間の準備の後、プログラムの参加者の前でこの役を演じたのですが、私はこの役の立場になって考えることがほとんどできませんでした。突然の大抜擢(?)で動揺していたこともありますが、よくよく考えてみると、私自身、これまで自分がHIVに感染するということを真剣に考えたことがなかったのが大きな原因だったと思います。『AIDSは他人事なんかじゃない』以前から分かっていたつもりでしたが、自分自身まだAIDSを他人事として捉えていたことを痛感しました。
 非感染者が感染者の立場になって考えることは決して簡単なことではありませんが、感染者、非感染者が共生していく上でとても大切なことだと思います。このプログラムは私にとても大切なことを気づかせてくれました。(坂東)

  8月5日(土)16時〜18時
  いま止めなければ! HIV不当解雇(HIV不当解雇訴訟を考える会)
  96年、最初のHIV不当解雇訴訟が勝訴し、最近でも日系ブラジル人HIV不当解雇訴訟も勝訴した。しかし、警視庁のHIV感染採用拒否事件がまた起きてしまった。この様な不当解雇を止めるにはどうしたらよいか考えてみる。

 講座ではまず、弁護士の清水勉氏が6月に判決の出た日系ブラジル人HIV不当解雇訴訟の解説をされた。この裁判は無断のHIV抗体検査について医療機関の責任が問われたはじめてのケースであり、大手企業における無断検査の実態に切り込むものだった。千葉地方裁判所は6月12日、滝川化学工業に未払金310万円と慰謝料200万円、市川東病院長に慰謝料150万円の支払いを命じ、一審で判決が確定した。
 清水氏は裁判の問題点として、提訴から判決まで2年半かかるなど、時間がかかりすぎる点や慰謝料額が低いことを指摘。懲罰的慰謝料を認めないことが、裁判で負けても払う金額はたかがしれているといった意識を生むなど、安易な差別をはびこらせているのではないか、「アメリカならこの会社はつぶれてる」といわれた。
 講座の後半は6月15日に東京都を相手に起こされた警視庁HIV不当採用拒否訴訟について清水氏と原告本人が話された。
 原告は97年10月、大学院修士課程2年生のとき、警視庁の警察官採用試験I類(大卒程度)に合格、修士課程終了後の98年7月、警察学校への入校に備え、血液検査を含む健康診断を受け、学生寮に入った。8月3日に警視庁本部に呼び出され、健康管理課長から「君の免疫力はものすごく落ちている」「仕事を継続するのは困難」「今回の就職はあきらめてほしい」とHIV感染を示唆され、学校長同席の中、クラス教官から「一身上の都合で今回の就職を辞退します」という文章を書かされ、署名・捺印し学生寮を出た、という。1週間後に原告は都立駒込病院で「通常の労働には十分耐えられる」との診断を受けている。
 原告は訴訟を起こすまでの葛藤や家族とのやりとりについて話された。信濃毎日新聞に掲載された記事の中にも書かれているが、原告は「同じ東京都という行政組織で一方はエイズの差別・偏見をなくそうと啓発活動をし、もう一方では本人に知らせないままHIV検査をする。なぜこんなに違うのか」と公的機関の建前と本音の落差に割り切れなさが募ったという。清水氏も「人権を守っていないのに、人権は守りますと平気でいえる社会」に疑問を投げかけた。この裁判の中で、東京都がどのような対応をとるのか、注目していきたい。(よしおか)

  8月6日(日)10時〜12時
  性感染症入門講座〜STD・HIV〜同仁斎メディカルクリニック:西大條文一)
  新宿区大久保のクリニックでは毎日のようにSTD(性感染症)とエイズの相談が持ち込まれます。その現場からのレポートと、STD、HIV入門講座。

 会場は、一般人から、エイズNGO系の人、内科の医師など、たくさんの人が集っていた。そういえば、エイズはエイズ単独に語られることが多いが、現在ひろがっているのは性感染症としてであり、関係者にはそうした基礎的な情報や知識が必要なのではないかと常々思っていた。
 はじめは、「ひとつひとつの病気や予防・治療の話があるのかな?」くらいに思って参加したのだが、実際の講師の話は、まず社会が性感染症にどうとりくんでいくか、感染のコントロールについては特に「国の意志」が明確であるかどうかが問われることが強調された。これまでの社会の歴史、専門家がどういう使命を背負っているか、というとてもヒューマンな視点があって、期待以上の収穫があったように思う。新宿というSTDのメッカ(?)で開業されているそうで、HIVについてもすでに東京医大、都立駒込病院と連携をとっているとのことだった。(ミカ)

  8月6日(日)10時〜12時
  女性自身で守るこころ&からだ 低用量ピルと女性用装着型コンドーム(清水敬子)
  低用量ピル、女性用コンドーム、銅付加IUDが相次いで発売され、まさに避妊元年ともいえる時期を迎えた日本。妊娠する性を持つ女性だからこそ避妊にも性感染症にも意識を高く持つことが必要だと思いませんか? 低用量ピル、女性用装着型コンドームを通して、『女性自身で守るこころとからだ』について一緒に考えてみましょう。

 講座では最初に、低用量ピルは「『私』が飲んでいるから妊娠しない」と女性が自分の意志で避妊を選択できるメリットを強調され、「妊娠は女性のからだにおこることなので、女性自身がコントロールする」「副作用問題はなくなった」「飲んで気持ち悪くなったり、ちょっとずつ出血しても、飲み続けて、薬に慣れればなくなる」「頼りになる婦人科医をつくる」といわれた。
 また、「ピルを飲むことによって血栓症になることはあっても血栓症になりやすい人は飲む前からわかるし、妊娠で死亡するリスクよりもピルで死亡するリスクの方が少ない」という。
 昨年のフォーラムの「ピルって安全なの?」で言われていた副作用で死亡した例や生涯および次世代へのホルモン影響、服用者から出た合成女性ホルモンが分解せず、環境問題が起こっていることは解決されたのだろうか? と思った。女性が自分で決められる、という選択肢ができたことは画期的なことだと思うが、男性と話し合って決めることはできないのだろうか? と思う。それは「理想」に過ぎないのだろうか。しかし、何でもかんでも自分一人で決めて、女性だけが副作用を被り、出資や検査を強いられ、時間に縛られ、妊娠したら自責の念にとらわれ、女性だけの責任にされてしまう男女の関わり方って何? と思った。もっと男女が話し合って協力しあって、からだや環境に負担の少ない避妊法を選び、男女の責任のもとに楽しい性生活が送れないものかと思う。
 性感染症防止に役立たない副作用のあるピルに比べて、女性用コンドームの出現は興味深いものがあった。
 大きさは男性用コンドームより大きく、表面はベトベトしている。ポリウレタン製で破れにくく、ウイルスを通しにくい。はずれず、潤滑ゼリーを追加すれば、引き込まれることもない。完璧に勃起していなくても使えるし、生理の時によい。男性は圧迫感がなく、女性は10回目を越すと使用感がなくなり、性感がいいそうだ。薬局で買える。1回で使い捨てで、男性用コンドームの併用は不可だそうだ。
 女性用コンドームはSTD予防のもう一つの選択肢といえる。 (穂中英美梨)

  8月6日(日)10時〜15時
  世界は今〜第13回国際AIDS会議に参加して〜HIVと人権・情報センター
  7月8日〜14日に南アフリカ共和国ダーバンで行われた国際会議の報告を行う。医療・保健・教育・社会問題・世界のNGOの活動等、各分野ごとに、ポスター、写真を使って世界の様子を伝える。

 第13回国際AIDS会議の報告会。今、世界のエイズがどのようになっていて、どのようなことが問題となっているのかが、わかりやすく解説された。特にアフリカのサハラ砂漠以南のエイズの状況は、深刻である。エイズによる死亡者は、先の戦争で亡くなった人の数をうわまっている。国連でも、エイズ問題を世界が取り組むべき最重要課題としている。事の重大さは、予想をはるかに超えていた。
 この世界会議の様子を、スピーカーがスライドをとおしてリアルに伝えてくれた。
 なお、セッションの行われた会場には、この国際会議で発行された世界中のエイズ予防啓発ポスターが展示されていた。
 環境問題や人口問題、食糧問題などとともに、エイズはまさに21世紀を見る上での鍵となる問題ではないか。エイズの問題は、20世紀人間が避けて通ってきた様々な問題の「つけ」として、今まさに目に見える形で表面化し始めている。しかしそのことに気づき始めているのは、PWH/Aなどほんの一部の人にすぎない。
 このままでは、本当に世界はどうなるのだろうと、強い危機感を抱いた。そして私たちは、この病気とともにどう生きることができるのだろうか? 私たちは今まさに困難な問題と直面しようとしている。そのとき人類は、この病気と闘っていく勇気と強さを試されるのだろう。人間は、本当にこの困難に立ち向かえるほど強いだろうか?(新ヶ江 明遠)

  8月6日(日)13時〜15時
  知った気でいるあなたのための「セクシュアリティ入門講座」(ライフ・エイズ・プロジェクト)
  「とくに、同性愛やトランスジェンダーについての授業は、ぼくの性についてのものの見方を根本から変えてくれた。知識は風化していくけれど、一度変えてもらったものの見方は、次のができるまで生きつづける」  ある高校生が卒業するときにこんな文章を残した。同性愛ってなんだ? トランスジェンダーってなんだ? 性についてのものの見方って? そんなこと知らない人歓迎。そして、そんなこと知っているというあなたといっしょに、「次」の見方をめざしましょう。
※LAPニュースレター版「セクシュアリティ入門講座」はこちら

ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)NEWSLETTER 講師写真 「一介のブンガク屋」を名乗る講師の木谷氏[右写真]は学生に同性愛やトランスジェンダーの授業を行なっている。その授業内容は木谷氏がセクシュアリティについて「新しい見方」を見つけるごとに変化してきたという。異性愛、両性愛、同性愛というセクシュアルオリエンテーション(性的指向)の視点にジェンダー・アイデンティティという軸が加わっていく等、自身の「変化」の経過がそのまま授業内容に活かされている。そうした変化を生み出したのはさまざまな人たちとの出会いだった。講座の中にも木谷氏の実体験にもとづいたエピソードが数多く語られ、ただ理論を学ぶのとは全く違う説得力を持っていた。これは木谷氏のほんわかとしたキャラクターによるところも大きいかもしれない。
 どんなものでも「そんなことわかってる」と思っている時ほどわかっていないもの。この講座で改めてセクシュアリティやジェンダーについて考える機会が持てた。そして自分の、ものの見方の視点がヘテロセクシュアルであることに気がつくことができた。木谷氏が言われていた「へテロのへテロ知らず」とはまさにその通りであった。(MO)
セクシュアリティ入門
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  8月6日(日)16時〜18時
  エイズキャンペーンのストラテジーpart2 〜コンサート、カフェ、そしてメディア…高度情報化社会の現場から〜(AIDS&Society研究会議)
  エイズ対策の現場はいま、どこにあるのでしょうか。こころみとして、高度に情報化された社会の中で、エイズ・キャンペーンの現場の1つである「コンサート」や「ポジティブ・カフェ」の有効性と可能性を検討する。

ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)NEWSLETTERイラスト 今、エイズの情報は拠点病院、保健所、学校といった限られたチャンネルの中で、有効かどうかの検討もないまま数年前と変わらない方法で流れているように思う。しかし今回のセッションでは、今後さらなる媒体や方法で社会や特定層にアプローチができるのではないか? という期待がもてた。
 まず、「ポジティブ・カフェ」は現在、軽井沢と山形ですでに運営されている。ここは、今後情報発信機能とコミュニケーション、ネットワーキングの場として活用されていくのだろう。会場では軽井沢の「ノーチェ」の案内のはがきが配布された。今度出かけた折りにはぜひたずねてみたいと思った。「AAA(Act Against AIDS)」はコンサートという場をつかって、メッセージを伝えようとしている。コンサートの場でどのような運営やメッセージ伝達をするかは、個々のアーチストによって異なるらしいが、そうした点在している可能性を、このAAAが線でつなぎ、さらに社会の別の面へ伝えていくものがある。参加しているアーチストによってそのアピールやコミットメントの深さは異なるそうだが、今後、より対象に近い活動として期待したいところである。このセッションの主催ともなっているエイズ&ソサエティ(A&S)は日本のエイズNGOとしてのアンブレラ組織のような存在で、今後どのような活動をしていくのかとても楽しみである。
 A&Sは、このセッションのはじまる前に、ジャズコンサートを開いた。演奏の設備等最低限の費用をA&S内にある野田基金から捻出し、アーチストは企画の意向を理解してのボランティアで参加していたとのこと。
 エイズのことは今後はエイズだけ語っていても広がならないので、こうした音楽など、別の接点をたくさんもちながら社会へ伝えていくほうがいいのだろう。そういう、「共感」をマネジメントしていく役割を担う動きが出てきたのだなと私は受けとめている。(キョウコ)

  8月6日(日)16時〜18時
  ネット世代が考えるHIV/AIDS的活用法CAI[Campus AIDS Interface]
  CAIが行うインターネットを利用したHIV/AIDS啓発活動の紹介及び、国内外のオススメHIV/AIDSサイトの開設・紹介をいたします。インターネットを利用したことのない方でも楽しめます。

 ネット世代が考えるHIV/AIDS活用法に参加してみた。普段からネットユーザーである私にとって気になる話題だったからだ。実際に主催団体でもあるCAIはネットを利用してHIV/AIDSや性に関する啓発活動をしている団体だと言う。私もかつてCAIのホームページにある「バーチャルHIV抗体検査」で感染の可能性があると出た1人だ。
 さて、講演内容はインターネットの重要性や今後のCAIのインターネットでの活動(i│modeを利用した啓発を企んでいるようだ)を10分程度。ネットユーザーが多かった為か簡単に説明が終わった。日本のAIDSに関するホームページと海外のホームページの話が始まった。各10サイトづつ紹介していた。
 日本のホームページに関することは、行政のホームページは正直言って難しくつまらないもの(?)が多く、使い勝手が悪いという事。しかし、東京都衛生局のホームページはHIV抗体検査の情報がうまく整理されていて便利だと言う。実際にホームページを見ながらの説明で非常にわかりやすかった。あと、医療系公務員のホームページや大学生が作成したホームページなど、インターネットの特徴でもある個人のホームページを推薦していた点が印象深かった。内容と言うよりは個人で情報発信ができるネットならではの情報公開を強調していた。
 また、海外のホームページはACT UPのムービーやHIV感染者の子供を対象にしたキャンプのホームページを紹介していた。なるほど、さすがアメリカ。そんなボランティア団体があるとは。また、食事を提供するアメリカのボランティア団体の成り立ち等、日本のボランティアが参考になりそうな情報を解説付きで説明してくれた。
 あらためて、ネットの重要性を認識する事になった。今後も私としてもネットを利用しつつ情報収集、また情報提供を心掛けていきたいと感じた。(WT)

  文化フォーラムに参加して
  たくさんの人との出会いとつながりを得ることができた(穂中英美梨)

 文化フォーラムは数年前から毎年参加しているが、今年はどちらかといえば閑散としていた感があった。自分自身の気持ちのもち方とも関係しているかもしれないが、マンネリ化を感じた。
 94年に横浜でエイズ国際会議があり、その直後の文化フォーラムは活気づいていた。98年のTVドラマ上演「神様、もう少しだけ」の時は、高校生のボランティアも来ていて、はなやかさもピークだったと思う。HIV・STDの感染者が減っているわけでもないのに、性行動の盛んな10代・20代は自分とは関係のないことと思っているようである。
 STDは難しくてわからない、だからこそ楽しみながら、自分やまわりにいる人の問題として気軽な気持ちで参加できるしかけが必要なのではないかと思った。座って聞く講演だけでなく、ビデオ・マンガ・ゲーム・音楽・絵を使ったり、専門的な知識をかみくだいて伝えたり、気軽に話し合える場を設定したり、演劇を使ったりしてみてもいいかと思う。
 多様な表現の中からHIV・STDの現実をつかみとり、どう生きていくかを考えられる場所になればよいと思う。
 私個人としては文化フォーラムを通じて、たくさんの人との出会いやつながりを得ることができ、参加することを楽しんできた。衰退していかない為にも柔軟なとりくみや宣伝が必要だろう。

  文化フォーラムに参加して
  大変充実した3日間。いつかは主催側として参加したい(坂東)

 私は今回のフォーラムで合計9つのプログラムに参加しました。感想を書いたプログラム以外にも、薬害やセクシュアリティのこと等、学ぶことがたくさんあり、大変充実した3日間でした。
 この3日間を通して、全体的に学生や一般の方の参加が思っていたよりも少なく、学生の私としては少し寂しかったです。AIDSのことに関心があっても、AIDS文化フォーラムのことを知らない人はまだたくさんいるはずです。感染者のプライバシーを最大限に配慮した上で、もう少しメディアや学校等を通じて宣伝し、一般の方々がAIDSのことに関心を持つ一つのきっかけになれば素晴らしいと思います。
 まだまだ私はAIDSのことに関して知らないことがたくさんありますが、もし可能であるならば、いつかは主催側としてエイズ文化フォーラムに参加したいと考えています。
 最後に、地方から来た私を快く迎えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。また来年も!?よろしくお願いします。

  文化フォーラムに参加して
  信頼関係があるからこそ、これだけの発表がなされた(清水茂徳)

ライフ・エイズ・プロジェクト(LAP)NEWSLETTERイラスト エイズ文化フォーラムでLAPは3日間、1階の展示場でブースを出展し、6日には講座を1つ持ちました。  ある参加者の方が「このフォーラムはいろいろな分野の人たちの人間関係、信頼関係がベースにある」と言われていました。僕もその重要性を強く感じています。
 というのも、たとえば予防啓発の活動をしているとこんなことを言われたりしませんか? 「そんなこといっても、自分のまわりには感染者なんていない。どこか遠い国・地域の話なんじゃない? 自分には関係ない」と。
 でも、「自分のまわりには感染者なんていない」と言う人には感染者の人は自分の感染のことを話しにくい。だからなおさら「自分のまわりには感染者なんていない」という確信を強めていくという「悪循環」も起こってくる。ある種の信頼関係がないと感染者・患者の人はもし、声をあげようと思っても、なかなか声をあげられないのではないかと思います。
 マスコミや講演会を主催しようとする人たちの場合も同様です。感染者の人の直の発言が聞きたい、しゃべって欲しい、出演して欲しいといった依頼が少なからず僕たちのところにも来ます。でも、信頼関係のないところに紹介することはできません。
 そうしたある種の信頼関係がエイズ文化フォーラムでは築かれています。プログラムをちょっと見ただけでも分かると思いますが、僕が数えただけでも10名近い感染者・患者の方がプログラムの主催側として関わられ、発言されていました。性感染の方、薬害の被害者の方、へテロセクシュアル、ゲイ、男性、女性などなど。また発言の内容・立場も様々で、恋愛について語った方、セックスについて語った方、生き方について語った方、医療について語った方、保健所の果たすべき役割について語った方、教育について語った方、薬害について語った方、警視庁警察官採用拒否事件訴訟について語った方など、多様な問題提起がなされていたように思います。
 もちろん、このフォーラムに限らず、多くの講演をされている方もいますが、エイズ文化フォーラムだから発言できた、発言しようと思ったという方も多かったのではないかと感じています。
 当事者である感染者・患者の人が発言することが必ずしも「善」であるとか、いいことであると言い切ることは出来ませんが、これだけ多様な感染者・患者の人の発言、問題提起が行なわれているエイズ文化フォーラムは日本では他に例のないものだと思います。
 こうした場を設けていただいた組織委員、実行委員、また総勢100名のボランティアの皆さんに心より感謝いたします。
 なお会場で配られていた「開催予告」によれば、次回は2001年8月3日(金)〜5日(土)まで同じ会場で行なわれるとのことです。みなさん、来年も会場でお会いしましょう。

  2000AIDS文化フォーラムin横浜
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  文化フォーラムの目的
 AIDS文化フォーラムはAIDSへのさまざまな取り組みの中で、一人ひとりが、共に生き、連帯し、未来への希望をつなぐために力をつける(エンパワ−メント)集いとして、すべてがボランティアによる、市民の手による、市民のための手持ち弁当型で行われている。広く市民に開かれたフォーラムとして、AIDSボランティアと市民の交流、AIDS関連団体・グループのネットワーク作り、多面的な啓発活動、医学面や政策面のみではなく文化的側面から積極的にAIDSを捉えていくことなどを目的としている。
文化フォーラムの構成
 横浜YMCAや横浜商工会議所エイズ問題対策懇談会などで構成される「組織委員会」が主催となり、プログラム(講座発表や展示等)を含めた構成・全体広報・ボランティア募集を「実行委員会」が受け持ち、総合的な連絡・調整機能は「事務局」(藤沢YMCA内)が担った。
講座発表や展示は見る側もやる側も無料
 講座発表や展示はエイズに関する視点を持った内容であれば個人、グループを問わず無料で申し込みができる。参加申込書は事務局に送る。発表や展示は入場無料で実施することが条件。また、その内容についての責任は各発表/展示者もしくは団体が持つことになる。
文化フォーラムの経費
 運営の経費は毎年、単年度予算として、団体からの助成金や個人的な寄付金に支えられている。行政からの直接的な資金提供は受けていないが、会場提供、広報支援、プログラム参加、関連イベント開催という形で支援を受けている。 (実施概要、参加団体マニュアルから構成)


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