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from・toトランスジェンダー

志麻 みなみ 

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■トランスジェンダーをご存じですか?

 また、横文字ですね。「今度はトランスジエンダー? トランジスターなら知ってるけど、トランスジェンダーって、何のコト?」
 そうおっしゃるあなたも、もしかして、ニューハーフやミスターレディという言葉なら聞いたことがあるかも。
「あー、テレビに出てくるアレね」 そう、アレです。
「生まれた時は男/女なのに、男/女が好きだからって、女/男になっちゃう人たちでしょ」 うーん、ちょっと違うかな。
「みんな性転換しているんでしょ?」 そんなことないですよ……。
 考えてみればごくアタリ前のこと。男/女に産まれたからって男/女らしくなり、女/男をHのお相手に選ぶとは限らないんです。男が好きな男の人もいれば、女を好きな女の人もいる。同じように男/女に産まれても、女/男として生きたい人もいる……そう大それたことではありません。  そんな風に、産まれつきの性とは逆の性で生きていきたい(生きている)人を「トランスジェンダー」と総称します。その中でも、一時的に異性の服を身につけることに留めている人を「トランスベスタイト」、また、外科手術によって身体を変えてしまう(変えたい)人のことを「トランスシェクシャル」といいます。だから、ニューハーフや、ミスターレディなんていうのは、マスコミが作り出した俗称。どことなく差別的なニュアンスのあるこれらの言葉は、できるだけ使ってほしくないですね。少なくとも当事者の私は「えっ、ニューハーフなんですか? お店はどちらなんですかぁ?」なんて言われるのは、いい気持ちではありません。
 それに気をつけてほしいのは、マスコミで取り上げられていることが、決してすべてではないということ。いくら野球のナイター中継が日本のテレビで盛んだからといって、野球をする日本人がみんな豪速球を投げられるか? といえばもちろん答えはNOです。同じように、トランスジェンダーがみんな夜のお仕事をしているわけではありません。昼間のお仕事をされている方も大勢います(だからといって、同僚の**さんが怪しくても、どうかそっとしておいてあげて下さい。彼女/彼はきっと一生懸命だから)。とにかくトランスジェンダーにだって、いい人も嫌な人も、お金持ちも貧乏人もいる……つまり「フツー」の人と大して変わらないということなのです。

■そしてエイズ……

 そう、「フツー」の人と変わらない、ということは、もちろんHIVも無関係ではありません。アンセイフ・セックスをすれば、トランスジェンダーであっても、当然HIVに感染する可能性は高いのです。事実、トランスジェンダーは、その構造上(?)Hのスタイルがとかくアンセイフ・セックスになりがち。ところが、どういうわけか、トランスジェンダー本人でもエイズに対する関心があまり高くないのです。基本的にSTD(性感染症)であるエイズの場合、ヘテロ(異性愛)/ホモ(同性愛)という2つのセクシュアル・オリエンテーション(性的指向)が強調されすぎたためでしょうか、男とも女ともおぼつかないトランスジェンダーは、どうやら置き去りにされてしまったようなのです! これは大問題と言わなければなりません。なぜなら、エイズに関するサポートはすべての人たちをもれなく対象としていかなければならないからです。男/女だけや、ヘテロ/ホモだけでももちろん不十分。トランスジェンダーをお忘れでは?
 例えば、HIVの抗体検査に行くとします。私の経験では暗唱番号と年齢、そして性別を記入するように言われました。「性別」……何のために必要なのかはわかりませんが、果して、抗体検査に性別は必要でしょうか? そして自分の性別を明らかにすることをためらって、何人のトランスジェンダーが検査に行けないことか! 誰にもわかりません。
 そして、仮にHIVに感染していることが分かったとしても、一体いくつのトランスジェンダー・フレンドリーな人/団体/病院があるのでしょうか? ただでさえ、健康保険証の性別を知られたくないがためにカゼを引いても病院に行けないのに、です。トランスジェンダーである上にHIVキャリアだなんて、誰も受け入れてくれないに決まっている……そう考えてもちっとも不思議なことではありません。
 そこで! トランスジェンダーに焦点をあてた活動をぜひ始めたいのです。まだ何が必要か、何ができるのか? そういったことさえもハッキリとはわからないような状況です。でも言えることは、早すぎるということはない、そして私ひとりでは何も出来ないということ。本人がトランスジェンダーでも、そうでなくとも、一緒にやってくれそうな方、ご連絡をお待ちしています。

[志麻みなみ]


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