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ぼちぼちインターネット[第5回]
PWAのインターネット活用法

阿部努 

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 こんにちは、阿部努といいます。PWA(HIV感染者・エイズ患者)です。
 今回の「ぼちぼちインターネット」は川口さんに代わり、私が担当させていただきたいと思います。テーマは「PWAのインターネット活用法」、PWAの一人としてのインターネットとの関わり方を簡単にしたためてみました。

■体調が悪くても「出かけられる」

 身体が弱ってきたり、病気になったりすると、行動範囲は自ずと狭くなってきますね。それは辛いことです。
 私も気分の悪い日などは、一日中家の中で過ごすことが多いです。芭蕉は病の床でもなお、夢で野を掛け巡ったそうですが、インターネットは体調が悪くて家でくすぶっている私を、狭いマンションの一室から外界へといざなってくれます。ただテレビをボーっと見るのとは違い、自分の行きたい場所へ連れ行ってくれるのですから、主体は自分です。流される情報をただ受け取るのではなく、欲しい情報、知りたい情報を求めてインターネット上をさまよう事ができます。
 立花隆氏はインターネットを「どこでもドア」と表現していますが、ホームページを辿って行けば、クーラーの効いた部屋でパジャマのまま世界一周旅行が楽しめます。飛行機の空席情報からホテルの空室情報、空港からホテルへの行き方、市内にある有名なレストラン等々も調べられますから、リアリティーのある仮想旅行が楽しめます(私とパソコンの相性がいいせいかも知れませんが、インターネットを楽しんでいるとき、私はよく自分の部屋にいながら自分の部屋にいないという感覚を覚えます)。
 買い物に出かけるのも、病人には一仕事。私自身、デパート等に買い物に行かなければならない用事には、気が重くなることが多いです。そんな買い物もインターネットのホームページで簡単に出来ます。岩室先生の新刊本「エイズ いま、何を、どう伝えるか」(http://www.trc.co.jp/977/japa/96018960.HTM)やジョンレノンのイラストをパッケージに使ったLOVE&PEACEのコンドーム(http://www.ptt.co.jp/tnl/l&p-j.htm)も買うことができます。

■電子情報だから保管も簡単

 もちろん、HIV感染症に関する最新情報もいろいろと知ることができます。月刊誌は1カ月、書籍では半年近くも情報が古くなってしまうといわれますが、インターネットにはそうしたタイムラグはありません。情報収集に熱心な医師の中にはインターネットで最新の医療情報を得ている方もいてとても心強いです。私はSHIPのホームページが早くできないかと心待ちにしています。
 こうして得られた様々な情報を「形のない電子情報」として保管しておくことができるのもインターネットの利点といえます。感染のことを話していない場合、エイズに関する本を部屋に置いておくと家族や同居人に「知られてしまうのでは」と心配になるかもしれませんが、パソコンの中に電子的に取り込んでおけばその心配も軽減されます(電子的にカギをかけておくことも可能です)。
 また、いくら量が増えてもかさばらないというのもとても便利です。

■新しい形で社会との接点を持つ

 仕事もやめてしまって、友人と実際に会うのも少なくなってしまい、前ほど社会との接点がなくなってしまったなぁ、と寂しく思うことも多々ありました。
 しかし、インターネットと出会って、私は新しい形で社会との接点を持つ事ができるようになりました。

電子メール(E-MAIL)

 まずは、電子メール(E-MAIL)。
 まだまだインターネットの電子メールを使っている人は多くありませんが、決して少なくもないですね。
 私には、電子メールフレンドとでも呼んだらいいでのしょうか、毎日のように電子メールを交換している仲間が数人います。私がPWAだと知っている人もいれば、知らない人もいます。毎日数通届く彼等からの電子メールを読むことで私の一日が始まります。電話よりも経済的ですし、普通の手紙とは比べものにならない程やりとりの時間が速いのが利点ですね。また、電子データは複製(コピー)が簡単ですから、同じ内容の文章(情報)を数人に送るのにとても便利です。
 また、知り合いのボランティア関係者やPWAでインターネットの電子メールを使える人には、連絡用に使わせていただいています。ちなみにこのLAPニュースレターも現在ではほとんどの原稿を電子メールでやり取りしているようです。以前は原稿をFAXで受け取り、パソコンに入力する作業が私にまわってきたりもしましたが、最近はそういった依頼はなくなりました。よいことです。
 電子メールは電話よりも人に優しい様な気がします。電話は、ベルがなったら「でなくちゃいけない」という気持ちを相手に抱かせますが、電子メールは相手が都合の良いときに読んでもらえば良いのですから(FAXでも呼び出し音が鳴ってしまうと気を使ってしまいます)。相手の寝ている夜中に電話を掛けるのははばかられますが、電子メールなら気にせずに送ってしまって、相手には翌日時間のあるときに読んでもらえばよいのです。

ニュースグループ

 次にニュースグループ。
 電子メールほど利用している人は多くありませんし、ホームページほどポピュラーな存在ではありませんが、これもインターネットでは無視できないものの一つです。パソコン通信のフォーラムやSIGの会議室に似たものだと思っていただければよいかと思います。電子掲示板とでも言ったらいいのでしょうか。自由に投稿できて、自由に意見を述べ合い、意見や情報を交換する場所です。議題(サブジェクト)は細かく分かれていて、英語のものだとHIV感染症専門のニュースグループも2、3あります。
 私のニュースグループへの関わり方は、そこに投稿されたものから情報を得る、そして疑問や反論がある場合は、投稿者に質問・反論するという形が基本です。時々自分からニュースグループに投稿して、新しい意見を述べたりします。家の中に居ても、日本中、時には世界中の人たちへとメッセージを交換できるニュースグループは、私にとってなくてはならないものです。社会から取り残されているという感じを抱きやすいPWAの私には、この様な社会参加と情報の交換の機会は貴重です。

メーリングリスト

 前記の電子メールを使い、ニュースグループのように意見や情報を交換するのがこのメーリングリストです。これは特定のメンバー間で電子メールの同時送信をしてくれるもので、リストに登録された世界中の人からメールを受け取ったり、世界中の人にメールを送ったりすることができます。
 リストへの登録はとても簡単で、メールを送るだけというところが大半です。自分の興味のあるテーマのメーリングリストに登録すると、それ以後、同じテーマに関心を寄せている人たちからの意見や情報がメールで届き、自分からメッセージを発信することもできるのです。
 HIV感染症について定評のあるメーリングリストもあり(とあるHIV感染症臨床医に紹介していただきました)、この病気に関する最新の情報を得ることができます。といっても専門用語も多い英語なのでちょっと分からないところもあるのですが、一人のPWAとしてはこうした情報にアクセスしていることが一つの安心感にもつながります。また、支える会のメーリングリストもあります。
 最近では年間五千円といった料金で自分のメーリングリストを開設することができます。興味のある方はご自分で作ってみてはいかがでしょうか。

ホームページ

 そしてホームページ。
 私自身、自分のホームページを持っています。あまり良い出来ではありませんが、それなりに「外界」に対して情報(意見)を発信しています。ときどき、「ホームページを見たよ」というメールを知らない方からいただく事があります。日本国内だけではなく、世界中からメールは来ます。ありがたいことです。
 ホームページは、自分で責任が負えれば、どんなことでも表現できます。商業メディアでは取り上げてもらえないような意見でも、ホームページを持つことによって、外へと発信することが可能です。こうした情報発信に必要な費用も少額で済みます。ちなみにLAPニュースレターを発行するのには数十万円かかるそうですが、ホームページの維持費は1カ月数千円です。自分のホームページを基本料金のみで登録できるプロバイダー(インターネット接続業者)も増えています。印刷物と違って情報の更新も簡単ですし、品切れの心配もありません。ホームページは、市井の人間が自分の意見を発信できる数少ないメディアなのです。

 インターネットは、私のように身体が弱っていたり、病気だったりする人間の物理的なハンディを軽減し、社会との接点を新しく創造してくれる素晴らしいメディアです。情報の受信者として、そして発信者として、賢く、楽しくインターネットと末長く付き合って行けたらと願っています。[阿部 努]


筆者のインターネット・パソコン通信使用環境

    【パソコン本体】Apple Performa 575
    【モデム】   MICRO CORE MC288XL
    【主なソフト】
        WWWブラウザ:Netscape
        ニュースグループ閲覧用ソフト:NEWSHOPPER
        電子メール用ソフト:Eudora
        FTPソフト:FETCH
        解凍用ソフト:Stuffit Expander
        Nifty-serve通信用ソフト:COMNIFTY+ナイフ+茄子
        汎用パソコン通信用ソフト:JTERM


LAPではパソコンの使い方講座を行っています


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