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「薬害エイズの歴史的経緯と被害者の現状」

東京HIV訴訟原告団 原告 

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 LAPでは95年2月26日(日)に東京HIV訴訟原告の方を講師にお招きして、勉強会を開きました。その内容はたいへん興味深いもので、また原告の方の生の声を聞くことのできる貴重な機会でもありました。ニュースレターを通じてより多くの方にこの問題についてもっと知っていただきたく、その際に原告の方が配られた資料を掲載させていただきます。

LAP勉強会「薬害エイズ」資料
「薬害エイズの歴史的経緯と被害者の現状」
〜原告の怒りと生活破壊の実態〜
■はじめに:

 薬害AIDSについてお話させていただく上で私たち原告が最も知って欲しいと願うことは、(1)血友病患者のHIV感染者は「被害者」であるという視点をしっかり持っていただきたい(単にAIDSという病気の被害者というような意味ではなく…)、そして(2)「薬害」という言葉では言い尽くせない、「これは殺人だ」という被害者の思いへの理解を求めたいという事なのです。
 そのために、みなさまにまず、薬害エイズ事件の歴史的経緯を知って頂き、それは今も現在進行型であること、被害の現状実態はどうか、そしてその解決のために原告は何を求めているかを、原告被害者のこれまでの薬害エイズとの闘いの歴史を中心に報告したいと思います。
 みなさまが私たち原告被害者の辿ってきた、そしていま辿っている現実を理解して下さることで、同情などではなく、一市民として問題意識と関心を薬害エイズ事件と本件訴訟に対し持ってくださることを願い、原告として以下の数点について発言、訴えさせて頂きます。

■1−患者の視点から見た薬害エイズ事件の発生におけるその歴史的経緯

  1. 1982年の段階でアメリカではエイズ原因ウイルスが疑われ、血液製剤による伝播する危険性が指摘されていた。新聞報道(7.20毎日)。
  2. 1983年の春以降、マスコミで盛んにAIDS報道がはじまる。  この時、新聞や報道を見て、患者の直感として輸入製剤の危険を強く感じた血友病患者家族はどうしていたか→情報の収集、厚生省に対し安全な国産製剤を求める要望書を提出する、等対応  血友病の治療の現場はどうなっていたか(医師や製薬メーカーはどう患者に説明したか)→患者に言い含めるように「安全だ」と説明。
  3. 被告の薬害隠しの事実→AIDS患者第1号隠し、汚染製剤の回収隠し、血友病患者の感染隠し
  4. 医療機関では患者のHIV抗体検査を患者家族には隠しておこない(被害の実態をこっそり確認している)そしてそれと並行して危険な輸入製剤がどんどん使用され続けている。
  5. 1985年3月「日本にもエイズ」の報道(輸入製剤で感染した国内の血友病患者に関する初の報道)しかしその後も危険な輸入製剤は使用され続ける。
  6. 回収すらされない−1985年7月ウイルス処理をした加熱製剤が認可されるが、それまで病院に出回った危険な輸入製剤は回収すらされなかった。

■2−その結果どのような事態に至ったのか

・我が国の血友病患者の約半数(約2000名)がHIV感染させられた。

■3−被害発生後の行政、医療機関、製薬会社の酷い対応(二重の犯罪性)とそれに対する患者の闘いがどのようなものであったか

  1. 被告、医療機関の患者への被害隠し−1985年後半以降、被害の実態はどうなっているのか、エイズという病気を理解する正確な医学的知識の収集、告知の問題への正しい認識の形成等々、患者自らの努力で調査し学び結論を出していくことでしか自らの生命と生活を守ることはできない日々が続く。
     しかしながら、医療の現場ではそれらのことが一切患者に隠され続け、積極的な情報提供はなかった。
  2. その結果、告知の問題では二次感染の悲劇という被害拡大を招いた。
  3. HIV医療の充実の問題についても患者自身の働きかけによって道を切り開いて来た。
  4. その中で様々な事実を知るための情報収集を患者が自発的に行ない、事実を知り、騙されたことへの憤りと犯罪的薬害の責任を社会的に問うことが、自分達が生き抜く上で不可欠という認識が患者の中に日増しに増大していく。

【補足】−日本での薬害AIDSにおける重要な問題点

  1. 当初AIDS流行地はアメリカであった。
  2. 日本国内の血液(献血血液)はAIDSフリーであった。
  3. 日本の血友病患者は米国由来の輸入血液製剤を使用されていた。
  4. 危険な輸入製剤の輸入禁止(検討されていたにも関わらず)や回収がまったくなされなかった。
  5. 避けられた被害であった。
    ・患者にせまった製剤に関する危険な情報が一切知らされず、むしろ根拠のない安全宣伝が執拗に繰り返し患者に対しなされた(騙された)
    ・血友病は製剤がなければ生きていけない病気ではなく、患者は製剤の危険性について説明されていれば誰もそのような製剤は使わなかった。血液製剤は血友病患者の命綱などではない。可哀相な悲劇などではない。
    ・国内の安全な血液から作られた製剤もあったがこれらを増産させるなど緊急非難的な感染回避策がまったくとられなかった。その背景には薬価差益など輸入製剤が利益の幅が大きいという経済的側面があった(お金のために犠牲になってHIV感染させられた悔しさ)。
  6. 被害がはっきりした1985年夏以後は「告知せず」の方針で、感染被害事実が患者に隠され続けた。その結果二次感染など、家族を巻き込み悲劇的な被害が拡大。発症予防等の最善の治療機会を患者から奪った。

■4−東京HIV訴訟提訴と裁判のいま

・薬害エイズ訴訟(1989年10月提訴)被告は国、厚生省、製薬会社5社(ミドリ十字、化学及血清療法研究所、バクスター、バイエル薬品、日本臓器 製薬)。この3月に結審を迎える。
・現在第6次提訴までの東京HIV訴訟原告被害者:
 総数91人・83家族 うち死亡32人 / うち妻5名(二次感染被害)
・裁判を起した原告の怒り、悔しさ

  1. 本当の情報が知らされず安全だと嘘をつかれた(騙された)。
  2. 患者に迫った危険から患者の生命を守うとする努力が全くなされなかった。
  3. 感染被害の実態が判明した時点から、その事実が隠され続けた、二重に騙された。そのため二次感染被害等、悲惨な被害拡大をまねいた。
  4. 責任者(被告)が社会的になんら非難、処罰されることなく、社会的な不利益は被害者に全て背負わされていることの悔しさ。
  5. もとの血友病患者に戻してほしい。それぞれハンディ(血友病)をもちながら個々の希望や人生設計をたて、家庭を築き、幸福を求め努力することができたもとの血友病患者に戻してほしい。

■5−現在この薬害エイズ事件はどうなり、被害者の現状と生活の実態はどうか

  1. 病状の進行と生活の維持、生命の危険/死への恐怖(生命そのものの死)
    ・年々進行する病状、免疫の低下、発症者、死亡者の増加
  2. 医療の問題
    /HIV治療施設の貧困な実態(最新最善の治療の場の確保の必要性)
    /被害者が泣き寝入りしている背景にある加害性の強い医療機関における被害者の実情
  3. 血友病治療とは比較にならない大変な感染症との闘病治療を継続していかなければならないこと、それに伴う様々な不利益と苦しみ
  4. 性行為感染症AIDSを背負わされたことによる困難
    ・人としてとても根源的な問題。恋愛や結婚に与える深いダメージ
  5. 被害が感染症であるため、社会的な問題(無理解・偏見等)による様々な不利益(就労、就学等)
  6. 将来の展望が持てない(社会的な死)
    ・年々免疫が低下するなか体力的に無理がきかなくなる
    ・体調維持、治療本位の生活を余儀なくされることによって、将来の人生設計や経済的な側面(生活レベルの低下)で制限を余儀なくされる
  7. その中で被害者は懸命に厳しく困難な現実と闘っている
    ・根治療法がない現在、発症予防治療を積極的に受け、次世代の薬に希望を託し、根気よく長い時間をかけて治療を継続するしかない。
    ・将来の展望は、現時点では明確にもてないが、将来の画期的な治療(新薬)等に希望を託し、人生をあきらめることなく、勉学・就職等人生の準備のため、あるいはその維持のために、体調を第一に考えながら努力していかなければならない。
    ・人として生れ、生きている実感を得ていくためには社会的に生きていると言えなければならない。被害者はそうあるために、諦めず(厳しい現実から逃げ、泣いていては死をまつしかない)、自らが強くなっていくことでしか幸福はつかめないと考える。そのために過酷で非情な現実としっかり向き合い闘っている〔裁判(生きぬくための裁判)・闘病・その他様々な日々の生活の中で〕
    ・しかし薬害エイズ被害者を取り巻く社会の現状は、被害者達にとってあまりにも過酷である。
  8. 被害者の半数以上が将来ある(これから社会へでる)青少年であるということについて
    ・私たちの社会の歪み(医療の歪み過ち・社会、大人がしでかした過ち)によって子ども達に重篤な感染症AIDSを背負わせた。そのことに対して私たち社会、大人はどう向き合うべきなのか。過酷で非情な現実と懸命に闘っている彼らが、せめて希望を持ってこれからの人生を生きられるように援助していこうという社会的視点がエイズ問題において強く求められる。裁判は社会がそのことをしっかり認める第一歩にすぎないが、その過程と、被告による責任ある謝罪なくして被害者の未来は有得ない。

■6−解決へ向けて原告が求めていること

・原告被害者が求めるもの(全面勝訴判決を。そして被告による謝罪と責任ある償いと真の被害救済の実現)
94年12月1日「東京HIV訴訟原告団が厚生省に申し入れた要請書」から

要請事項:

  1. 東京HIV訴訟においてこれ以上の争いを止め、早期解決を早急に提示し、かつ当薬害事件の真相を明らかにしてその責任を明確にするよう求めます。
  2. 国、厚生省として血友病患者に迫った感染危機の回避に取組まなかったため取り返しのつかない被害実態に至った事に対する反省と謝罪を被害者に示すよう求めます。
  3. 原告被害者が要求している通り、エイズ感染被害に対する責任ある賠償と恒久的償いによる完全救済の実現を直ちに実施するよう求めます。
  4. 生存被害者に対し、厚生省としてその責任において患者が望む最善の医療を実施する体制を早急に確保するよう求めます。
  5. 完全救済の実現に取組むにあたり、被害者の意見が十分に反映された救済となるよう、厚生大臣が原告被害者の声を直接聞く機会を確保するように求めます。
  6. 当該加害製薬会社に対し、害毒たる製剤を販売しかつ虚偽の宣伝までして薬害被害を拡大した責任は、公益性の重い製薬企業の社会責務に鑑み、非常に重大な反社会行為として、厚生省は厳重なる処分を行なうことを求めます。
  7. 反省なく続く薬害発生を断ち切るため、薬害監視オンブズマン制度の導入や薬害調査委員会の設置などの医薬行政の改革を求めます。
  8. それら医薬行政改革、薬害再発防止に資するためにも、薬害エイズ事件にかかわる一切の資料の公開を求めます。

■7−これら被害者の被害回復に向けた闘いの勝利と被害救済実現へ向けての社会的支援、理解の必要性

・ HIV訴訟を支える会について

  東京HIV訴訟原告団事務局/同弁護団事務局
  連絡先:東京都文京区大塚3-19-10 文京KSビル2階
       鈴木利廣法律事務所内 TEL03-3941-2472


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