LAP NEWSLETTER

HIVワークショップ[2]
エイズ101報告

清水茂徳 

RETURN TOニュースレター第3号メニューに戻る

 6月25日に行なわれた「HIVワークショップ」の報告です。このワークショップはサンフランシスコのGCHPというサポートグループで行なわれているスキルに若干の改良を加えたものです。ファシリテーターはサンフランシスコ在住の鬼塚氏にお願いしました。

■HIV抗体検査の解説とディスカッション(20min)

 サンフランシスコでのHIV抗体検査の解説です。鬼塚氏曰く、「ずーっと以前から無料で行われていて、何回でも受けられる」そうです。
 また、その際に「匿名性」と「コンフィデンシャル(秘密保持)」の2点が保証されていることが大切である、と述べられました。
 そのシステムの特徴は、いくつかの段階において「やっぱり検査を受けるのをやめる」「結果を聞くのをやめる」といった選択が可能だという点です。
 検査当日、保健所に行くとそのコードで出欠を取られ、別室に行きます。そこにはカウンセラーがいて、「HIVのテストはどういうテストなのか」説明してくれます。HIVに感染したことと発症とは違うこと、などの解説、HIV抗体検査の手順の説明、そして15分ぐらいビデオを見せられます。
 ここでは、何もわからずに来ている人もいるという前提で、そういった人たちにHIV抗体検査がどういった意味を持っているのかを理解してもらうことを目的としています。
 そして、この時点で「そうか、HIVテストってこういう意味だったのか、じゃあ俺は受けるのをやめた」「それなら私は受けないわ」と帰っていく人もいます。それはそれでいいとされています。「告知前のカウンセリング」でも、同様の選択が可能です。

■説得のロール・プレイング

 ペアで「よく分かってない役」と「その人を説得する役」にわかれて、修得した知識をいかに相手にうまく伝えていくかを体験的に理解していくための実習。状況設定の例の中には「正確な知識」も含まれており、その場合は「なぜ正しいのか」をお互いに話し合います。

[状況設定例]

■リスク別並べかえと選択の実習

 性行為の書かれたカードを感染のリスクが高いものから低いものへと並べかえ(リスク・スケールづくり)、自分はどこまでのリスクを許容していくか選択する実習。
 「感染に必要な3要素」(この3つがそろったときに初めて感染の可能性が出てくる)というものがGCHPのマニュアルにあり、それと組み合わせて行なうと効果的です。「3要素」は事前に提示しておくこともできますし、一度並べ替えの実習をして、その後に提示し、その「3要素」を考慮にいれて再度並べかえをしてもらうという手もあります。

[感染に必要な3要素]

  1. HIVが存在すること
  2. 感染に足りる十分な量があること
  3. 血液の中(消化器系ではなく循環器系)に入ること

[カードの記入例と並べかえ例]

  <リスクが高い>
     ↑   
(1)GEETTING FUCKED WITHOUT A CONDOM
  (コンドーム無しで入れられる方)
  
(2)FUCKING WITHOUT A CONDOM
  (コンドーム無しでいれる方)

 ここまでと下とではかなり距離がある
  
(3)SUCKING WITHOUT A CONDOM
  (コンドーム無しのオーラルセックスをする方)
  
(4)GETTING FUCKED WITH A CONDOM
  (コンドーム有りで入れられる方)
  
(5)FUCKING WITH A CONDOM
  (コンドーム有りでいれる方)

 ここまでと上とではちょっと距離がある
  
(6)GETTING SUCKED
  (オーラルセックスをされる方)
  
(6)DEEP KISSING
  (ディープキス、フレンチキス)
  
(6)SUCKING WITH A CONDOM
  (コンドーム有のオーラルセックスをする方)

 上記の3つは「順列化の必要もない」ほどリスクは低い
  
(9)MUTUAL MASTURBATION
  (お互いにマスターベーションを見せ合う)
     ↓
  <リスクが低い>

■解説

[自分の行動の選択(ホーニ)]

 状況を設定し、その場合に自分が(1)〜(9)のリスク・スケールのどこまでの行為をするかを選択する実習。「自分の行為としてどこまでやるか」を選ぶ(英語では「ホーニ」というそうです)。状況設定の例として以下のものがあります。

 参加者にペンや矢印の書かれたカードを持ってもらい、それをリスク・スケールのカードの横に置いてもらいます。
 この実習の中で参加者が「自分がうつされないため」だけの視点で選択をしていることに気づくことがあります。多くの人のHIVに感染していない確立が0ではない(一度でもコンドームを付けていないセックスをしたことがある)とするならば、「自分がうつすかも知れない」という視点も必然的に出てくる場合があるます。また、ファシリテーターがそうした視点のあることをコメントすることも可能です。

■まとめ

 セックスにはなんらかの感染の可能性があり、どのようなセックスをするかは自分が決めるしかない。自分の性交のグレードを決めていくのは自分である。そして、パートナーとそのグレード(リスク)の許容点のコンセンサス(合意)を得て、その範囲内でセックスを楽しむことが望ましい。
 知識を得ても実際の行動変革を邪魔するものがある。時には自分の信念や性格、行動パターンを変えて行くことも必要である。確かに乗り越えるのは大変だが、行動変革を伴わなければその知識は役に立たないものになってしまう。

 今回のHIVワークショップ開催にあたり、サンフランシスコの鬼塚さんには大変お世話になりました。快くファシリテーターを引き受けてくださり本当にありがとうございました。[清水茂徳]


RETURN TOニュースレター第3号メニューに戻る