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携帯電話の障害者割引への要望と回答


《ご注意》KDDI(au)はスマイルハート割引(障害者割引き)の申し込み時の「手帳の確認」において、「必ずコピーをとらせていただいています」と対応を変更しました。(2004年7月現在)

歓迎の一方、個人情報の扱いに不安の声

 携帯電話の障害者割引きが2003年9月1日から順次はじまっています。LAPには当事者から喜びの声が届いている一方で、個人情報をどこまで提示する必要があるか、どのように扱われるか不安という声もあがっています。
 このサービスは「携帯電話が障害者の方々の行動範囲を広げ、コミュニケーションを豊かにするものとして幅広くご利用いただいていることから、更なる社会参加の一助としてご利用いただけるよう」にとNTTドコモが「ハーティ割引(ふれあい割引)」として先陣を切って発表・導入し、他社も導入しています。
  割引きの内容は各社に違いがありますが、共通しているのは身体、療育、精神といった手帳の種別や等級に関わらず手帳の交付を受けていれば対象となる点です。

各社に「要望書」と「現状お伺い」を送付

 携帯電話だけに関心はとても高く、LAPでは2003年8月30日付でNTTドコモ、9月30日付でJ-フォン(現ボーダフォン)、11月1日付でKDDI(au)、11月5日付でツーカーセルラー東京、ツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西へ要望書と現状お伺いを送付しました。
 NTTドコモから回答が2003年9月25日付で届きました。KDDI(au)からは12月9日付で、ツーカーセルラー東京からは12月11日付で、ツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西からは12月10日付で回答が届きました。残念ながら2004年1月現在、J-フォン(現ボーダフォン)からの回答は届いていません。
 LAPでは各社へ要望書をお送りした際に明記したとおり、障害を持つ当事者が携帯電話の障害者割引きを申し込むかどうかの自己決定を支援するための情報提供の一環として回答を掲載しています。

NTTドコモは手帳のコピー不要と明言。通知文書で対応を徹底

 NTTドコモは回答で、『「ハーティ割引(ふれあい割引)」を、お申込みいただいた場合の確認方法につきましては、コピーは行わず、手帳の目視確認のみ行っております』と手帳の複写が不必要であることを認め、『手帳を特定する情報として、手帳の種類、手帳番号、発行自治体名を、記録させていただいております』としています(ここでいう「手帳の種類」とは障害名、等級等ではなく、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれの手帳であるかを指します)。障害者割引の申し込みの際に窓口で手帳のコピーを求めるという対応は不適切であることが回答で明らかになりました。また、苦情受付担当窓口としてNTTドコモお客様相談室(連絡先:03-5156-3030 午前9時〜午後5時 土・日・祝日除く)をあげています。
 LAPの要望項目の趣旨は「手帳に記載されている氏名、生年月日、写真(手帳に貼付されている場合)のみをもって手帳が本人のものであるかどうかを確認することで申し込みには十分」というもので、それが実現していないのは残念ですが、コピーを行わないこと、記録する項目が明示されたことは一定の評価に値するものです。

〈追加情報〉
 NTTドコモからの回答後、都内のドコモショップで手帳のコピーをとられたとという報告が寄せられたため、LAPはNTTドコモに調査と改善のお願いをしました。12月1日に電話で回答があり、新規契約時以外にコピーをとっていた事実があったことを認め、反省・改善、コピーの破棄を約束。11月26日、各支店とセンターに新規契約以外の場合は確認資料のコピーを一切とらないよう通知文書を送り、周知徹底しているとのことでした。
 なお、新規契約と同時に「ハーティ割引(ふれあい割引)」を申し込む際も、新規契約の確認資料を運転免許証や日本国パスポートなどとすることで、手帳のコピーは不要となります。しかし、直営店でない、ドコモ取扱店等では通知が徹底していないことも考えられますので、コピーをされたくない方は9月25日のNTTドコモの回答をプリントアウトし、持参されることをお勧めします。

KDDI(au)は「必ずコピーを取る」と対応を変更 2004年7月25日追加

 KDDI(au)からは以前、下のような内容の回答(グレーの文字の部分)が届いておりましたが、ある当事者の方から、au(KDDI)は障害者割引きの申し込み時に障害者手帳のコピーを必ずとる方針だと言われた、との報告がありました。
 私どもでもさっそく、「auお客様センター」へ電話し、確認しましたところ、スマイルハート割引(障害者割引き)の申し込み時の「手帳の確認」において、「必ずコピーをとらせていただいています」との回答でした。 また、本人確認書類として手帳以外のもの(たとえば運転免許証)を提示した場合は、本人確認書類(たとえば運転免許証)と手帳の両方のコピーを取るとの回答でした。
 「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」(平成10年12月2日郵政省告示第570号)や「個人情報保護に関するコンプライアンス・プログラムの要求事項」(JIS Q 15001)をはじめ、障害者のプライバシーの保護については各方面からその重要性が指摘されている中、KDDI(au)がこのような対応をされることは残念でなりません。KDDI(au)は「障害者の方々のコミュニケーション手段として携帯電話のご利用ニーズが増加していることを受け、更に多くの方々に手軽に携帯電話をご利用いただくため」に「スマイルハート割引」(障害者割引き)を導入したとしていますが、「手軽」とはほど遠くなってしまってはいないでしょうか?

 なお、障害者割引きとは別の話になりますが、携帯電話の割引きについて、日経トレンディ2004年3月号「得する裏ワザランキング」(P15)に次の記事が掲載されていました。

 auに限られるが、ケータイの基本使用料と通話料をトータルで下げるのに最も有効なのが「ガク割」サービス。基本使用料と、同キャリアのケータイや固定電話への通話料が半額になる。学生が対象だが、社会人でも入る技がある。初年度3万円(入学金2万円と最低1科目分の授業料)を支払って放送大学の全科履修生になれば、「ガク割」の対象になれるのだ。入学後は、最初に支払った3万円だけで、最長10年間学生証を使い続けることができる。

 KDDI(au)からの回答は2003年12月9日付(後日、電話で追加した質問事項については2004年1月16日付)で届きました。回答内容の「無断」転載・転用を行わないようお願いがありましたので、弊会ではKDDIに転載、転用、引用の了解を求めましたが、残念ながら、ご同意が得られませんでした。しかし、要旨をかいつまんで掲載することについては担当者にご了解いただくことができましたので、回答の要旨をかいつまんで、また弊会なりの補足を含めてご紹介します。なお、担当者は、KDDIに問い合わせがあれば個別に回答すると電話で述べられました。
 「スマイルハート割引」を申し込むには(1)申込者が本人であるかどうかの確認とともに、(2)割引きの対象者であるかどうかの確認という2つの手順を踏む必要があります。(1)の申込者が本人であるかどうかの確認には運転免許証や健康保険証、日本国パスポート、身体障害者手帳等のいわゆる「本人確認書類」を用い、KDDIはこの「本人確認書類」は本人の了解を得た上でコピーをとるとしています。「スマイルハート割引」の申込者については運転免許証や健康保険証、日本国パスポート等ではなく、「手帳」によって申込者が本人であるかどうかの確認の手順を踏むことを求めています(この場合は「手帳」のコピーを求められることになります)。しかし、本人が希望した場合には(1)の申込者が本人であるかどうかの確認を「手帳」以外でおこなうとしています。この場合は「手帳」のコピーはとらず、氏名の確認のみを行うことで(2)の割引きの対象者であるかどうかの確認をするとのことです。
 KDDIに特徴的な点として、「スマイルハート割引」の申込者については運転免許証や健康保険証、日本国パスポートではなく、「手帳」によって(1)の申込者が本人であるかどうかの確認を行っているという点があげられますが、どういった理由からあえて他の利用者と違う対応をしているのか、その説明は回答には書かれていません。「手帳」以外で(1)の手順を踏むには本人が希望する必要があるというのがKDDIの方針のようです。
 しかし、本人が「手帳」以外で(1)の手順を踏むことを希望をすれば、(2)の手順は「手帳」に記載された氏名の確認のみで行われるという点は障害という個人情報の取り扱い方として高く評価できるものです。

〈追加情報〉
 auで手帳のコピーを断って障害者割引きの申し込みをされた方からの報告が届いています。

ツーカーはコピー不要へ。対応を変更 2004年1月24日追加

 ツーカーセルラー東京、ツーカーセルラー東海、ツーカーホン関西の3社は2003年12月11日付および12月10日付の回答で、現状について『新規加入の際、お客様にご了解いただいた上で、契約後の事実確認用として本人確認書類のコピーをさせていただいております。また、既にご契約いただいているお客様が、「エール17」「エール35」へお申し込みされる場合につきましても、お客様にご了解を得た上で手帳のコピーをさせていただいております』等と述べた上で、今後の対応について『弊社は貴信の貴重なご意見を参考に、次の通りよりプライバシーに配慮した対応に早急に変更したいと考えております。(今月中を予定しております)』とし、『(1)新規ご加入の際に、本人確認資料として手帳をご提示された場合 手帳のコピーの際、安心してご利用いただけるよう確認事項(「手帳の種類」「手帳番号」「発行自治体名」「氏名」「生年月日」「住所」「有効期限」「写真」をいいます。)以外はマスキングをするなどの配慮をさせていただきます』『(2)既にご契約いただいているお客様が「エール17」「エール35」にお申し込みをされる場合 手帳をご提示いただきますが、コピーは行わず、手帳に記載された「手帳の種類」「手帳番号」「発行自治体名」を記録させていただく方法に(と)いたします。』等と変更項目をあげています。
  2004年1月に「お客様センター」(0077-789-151)に電話をし、コミュニケーターに「手帳」の扱いについて質問したところ、上記(1)および(2)の変更がなされていたことが確認できました。
 LAPの要望項目の趣旨は「手帳に記載されている氏名、生年月日、写真(手帳に貼付されている場合)のみをもって手帳が本人のものであるかどうかを確認することで申し込みには十分」というもので、それが実現していないのは残念ですが、LAPの要望を契機に、「よりプライバシーに配慮した対応」への早急な変更を検討、実行されたことは一定の評価に値するものです。

割引き申し込み時の対応事例・体験 2005年5月5日追加


 携帯電話の障害者割引やその個人情報の取り扱いについてのご意見、申し込み時等の対応事例・体験などがありましたら、ぜひLAPまでお知らせください。

NTTドコモ「ハーティ割引(ふれあい割引)」のご提供開始について
http://www.nttdocomo.co.jp/b_free/hearty.html
Jフォンのプレスリリース[PDF]
http://www.vodafone.jp/japanese/release/2003/030828.pdf
auのプレスリリース
http://www.au.kddi.com/news/topics/smile030805.html
ツーカーのニュースリリース
http://www.tu-ka.co.jp/news/release/030821.html

RETURN TO NTTドコモへの要望書(他社への要望書も日付や固有名詞をのぞきほぼ同様の内容です)
RETURN TO NTTドコモからの回答
RETURN TO NTTドコモからの回答・PDF版(136KB)
RETURN TO ツーカーセルラー東京からの回答・PDF版(148KB)NEW1/24/2004新
RETURN TO ツーカーセルラー東海からの回答・PDF版(156KB)NEW1/24/2004新
RETURN TO ツーカーホン関西からの回答・PDF版(160KB)NEW1/24/2004新