症例から学ぶHIV感染症診療のコツ-JAPANESE- / 16
2000.11.30

jap0016

 
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スライド13,14,15,16

 症例4も古典的なプロテアーゼ阻害薬を含むカクテル療法(AZT/3TC/IDV)を行い、一過性にウイルス量を検出限界以下に押さえる事に成功したものの、再びウイルスが顔を出し始めたという症例です。しかし、本症例では患者さんがアドヒアランスの問題がある事を自分で申告しています。このような症例に対してオプションがスライド13に示されました。Voteの結果はおよそ1/4(24%)の方がカウンセリングによるアドヒアランスの改善を指示されました。およそ1/3(29%)の方はプロテアーゼ阻害薬からNNRTI中心の処方であるオプション3を選択されました。そして半数弱(45%)の方は耐性検査の施行を支持されました。アドヒアランスに関するカウンセリングについてはクリツケス先生もその意義は認められたものの、既に患者自身が予定どおり服薬する事が困難であるといっている処方をそのまま継続させる事は問題が多いとコメントされていました。
 結局、セッションの中では耐性検査の施行が選択され、その結果は前回と同様にプロテアーゼ阻害薬については野生型、逆転写酵素阻害薬に関してはM184VのみでAZTやプロテアーゼ阻害薬は「無事」という結果が得られました。この結果を踏まえてスライド15のオプションが示されました。
 Voteの結果は小数の方を除いて新しくNNRTIを核にするオプション3(d4T/ddI/EFV)(41%)か1日2回で済むダブルプロテアーゼを核とするオプション5(d4T/ddI/RTV/IDV)(46%)を選択されました。クリツケス先生はオプション3も5も良い選択であるが、既にIDVが使用されてきた患者に対しては同じクラスのプロテアーゼ阻害薬を使用し続けて、NNRTIは将来の使用にとっておきたいというコメントをされました。
 ここで岩本先生は非常に臨床的で面白い質問をクリツケス先生に投げかけられます。それは3TCの使用に伴うM184V変異とddI交叉耐性の問題でした。即ち「ddIの使用によってもM184Vの変異が出現するわけですが、3TCの使用歴があり既にM184V変異を生じたウイルスを持っている患者さんにどのくらいddIの有効性が期待できるか?」という質問でした。クリツケス先生の回答は「3TCの使用によりM184V変異が生じたウイルスのddIに対するIC50(感受性)を調べてみると意外と感受性が保たれておりIC50の変化もTwo fold程度にしか過ぎない」というものでした。この研究はドイツのミラー医師らがVircoのサポートを受けて行いJournal of Infectious Diseasesに2-3年ほどまえに報告したものです。